14日目 散髪

彼曰く、髪を切るのに朝シャワーを浴びるという失態。


 ***


今日は美容院です。

つい先日言ったばかりな気がしていましたが、カレンダーを見てみたら意外にまだひと月くらい。

予約した時点では「そろそろ切りたい、切らないとまずい気がする」くらいに思っていましたが、そうでもなかったようです。

前回行った時が4か月ほど経ってしまっていた結果、「次はもう少し早く決まてもらえると…」と美容師さんに言わせてしまったので意識的に早めに来ました。

でも逆に今回は早すぎたかもしれませんね。

前のめりにもほどがある。


でもきっとここを逃すと次来るのがまた4か月後になってしまう。

私の髪に対する意識が向いている間に切ってもらわないと、また伸ばしっぱなしになるに違いない。

鉄は熱いうちに打て、と言いますしね。

髪は早いうちに切っておくものです。


外は雨、台風でもないのに記録的な大雨が全国的に降っている今、外出するのはおっくうなんですが、予約してしまったものは仕方ない。

どうせ家にいても何もしないので、やはりカフェに行くことを理由にPCとともに出発です。


座って美容師さんとお話しするのは、ときに恥ずかしく、ときにリラックスにもなります。

私はどちらかといえば陰キャグループに分類されるので、慣れていないと話すのにかなりの緊張を催してしまうんです。

でも今の美容師さん、2回目とはいえ割とフランクに話してくれるのでとてもいいです。

気軽に話せるお友達、とまではまだいかないですが、あと数回通えばそうなれる気がします。

私のリラックス具合が高まるまであと少し、経験値を稼がねば…。


その美容師さんとオリンピックやら、お昼ごはん何を食べるかの話。

そして雨の話、ガラス張りの壁に雨が打ち付けられるのを見て、やはり話したくなってしまいました。

「今日雨凄いですねー」

「いやほんとに、急に降ってきましたよね」

「この雨のなか出かけるのはやっぱり面倒になっちゃいます」

「わかります、洗濯物困りますしね」

ただの天気の話なのにこれだけ盛り上がる、やはり天気の話は陰キャを救うための話題だと改めて感じていると、美容師さんが手を止め、鏡越しに言ってきました。

「私、雨の日嫌いなんですよね」

「あ、そうなんですか、僕もあんまり好きじゃないですね。濡れるの面倒なんで」

「そう、だから非常に嫌いです。非常に」

右手にハサミ、左手にコームを握りしめ、胸の前で構えている姿が鏡越しに見て取れます。

「お、おう。めっちゃ嫌いじゃないですか」

「めっちゃ嫌いです!うっとうしいんですよね」

嫌悪感バチバチで訴えかけてくる美容師さんに、ちょっとだけ圧倒されます。

わざわざ話し言葉で”非常に”というあたり、感情の深刻さがうかがえます。

最近の話し言葉って面白いな~と思いました。

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