6日目 悠々自適
彼曰く、こういう日があっても許される世界。
***
本日は休業日。
本日は休業日です。
仕事なんて行くわけない。
先々週の山場を越え、先週の大一番を駆け抜けた私。
まだまだ超えないといけない壁はあるけど、その前に一呼吸つかせてほしい。
休みの間に出勤した分を代休申請して、無理やり休みの日をもぎ取った。
周りの視線も気になるけど、特に気にする必要もなし。
私は私の仕事をしているだけなのだから誰に文句を言われる筋合いもない。
本当にそれでいいの?ほかの人の手助けとかしてあげなくていいの?
困っている先輩は残って仕事をしているよ?
まだ仕事に慣れていない新人は君の助言を待っているんじゃないのかい?
頭の片隅から誰かの優しい声が届く。
世界の平和を含んだ羽毛のような、慈愛のこもったその声にふっと笑みをこぼし。
「知るかそんなもん」
と、まさに一笑に付した。
仕事は好きだし、楽しいと思っている。
でも仕事に人生のすべてをかけているわけではない。
自分のしたいことに全力を注ぐための時間をもらってもいいでしょう?
ただでさえ先週は仕事に時間を食い破られてやりたいことの10分の1もできなかったんだ。
毎日コンビニ弁当とか、切り詰めた生活ばかりだとストレスしかたまらないでしょ。
つまんないよそんな生活。
たまにはうまいご飯を食べさせてくれ。
食べたいものを好きなように食べさせてくれ。
好き放題させてくれよ。
その思いを具現化して、今日は昼から寿司を食べた。
夏の7種盛り。
うなぎ、アナゴ、イカ、鱧、こはだ、ツブ貝、カツオ。
多分この7種だった気がする。
こまいことはいい、美味しかったのだからそれで。
初めて食べる葉ワサビは噛んだ瞬間に鼻をつんざいて、吐き気を催すほどの辛さだった。
それでも無理して茶碗蒸しをほおばり、いくらと鰆の脂でごまかして冷茶で流す。
体を走る爽快感が私に新しい夏を刻んでいった。
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