4日目 ポテチ

彼曰く、これは誘惑に負けたわけじゃないよ?


 ***


コンビニは私の敵であり、味方でもある。

時間がないときに何を食べようか迷って結局何も食べれずに会社から帰ってくる私にとって、いつでも開いているお店は貴重だ。

前はちゃんとスーパーかどこかで総菜や食材を買って、家で温めるなり料理しようという気持ちはあった。

でも今もそれがあるとは言えない。

自分の時間を取ろうとすると、どうしても何かを犠牲にしないといけなくなってしまうのだから。

配られた時間の短さを痛感する。


もっと持ち時間が長ければやりたいことに費やせるのにな。

ま、仕方ないことだけど。


そして今日も私は流れるようにコンビニに入る。

入ったからには覚悟を決めて買えばいいものを、一抹の理性がコンビニ弁当を買う手を止める。

その代わりに食べるとしたらおにぎりやサンドイッチ。

いつものプロテイン飲料と菓子パン一つ。

これもいつも通りなので変な感じはしない。


しかしここ2,3日は私の感覚が違っていた。

私の右手にはザバスプロテインヨーグルト。

左手にはおにぎり2つとアイス。

まあ夏だしね、冷たいもの食べたくもなるよ。

そしてもう一つ左手からぶら下がっている大き目の袋。

表に書かれた『堅あげポテト』という名前。


そうポテチ。

固い歯ごたえと少し濃すぎると感じるくらいの塩気。

暴力的なまでの油にまみれたでんぷんの味。

食べすぎてはいけないとわかっていながらどうしても食べたくなってしまうあの味が、脱力気味の左手から当然のようにぶら下がっている。


誘惑に負けたわけじゃない。

それもこれも、全部夏のせいだ。

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