19日目 『竜とそばかすの姫』感想
彼曰く、あの夏を越えられたかは見た人次第で変わりそう。
***
というわけで感想です。
ざっくりとした話の流れは昨日の日記で。
うまいこと拾えることができればもっと自分の力にできそうなものですが、まだまだシナリオの書き起こし能力は足りていないようです。
特訓が、必要なようですね。
頑張らねば。
では早速。
まず目を引くのが<U>の世界。
”As”《アズ》と呼ばれるアバター数50億を超える壮大な仮想世界を、3D空間を用いて豪快壮大に表現していて、その世界観が冒頭で思いっきりぶつかってくる。
これが1つ目、映像の暴力。
そしてモーションキャプチャーによる豊かな表現で歌いだすベル。
圧倒的な音楽と声量で圧倒してくる音。
これが2つ目の音の暴力。
全体の比率として、現実世界と仮想世界のシーンは半々くらい。
そのうちに占める音楽シーンはそれほど多くないですが、逆に音楽の凄さを引き立てているように感じます。
すず、ベルの声優さんの演技が素晴らしいですね。
声優は初挑戦だそうですが、心に傷を負って自信がない、弱さの中に強さを秘めたような声色が非常に役柄とマッチしていました。
声優という意味ではすずの親友・ヒロちゃん役の幾田りら。
彼女は私も大好きなうYOASOBIのボーカルでもあります。
こちらも声優初挑戦。
どうせなら歌ってほしかったですが、それでも眼鏡ネットオタクな話し方がうまくできていました。
それ以外の声優さんもいい演技でした。
仮想世界の表現はフル3D。
サマーウォーズの時のように少しセル描きパートはなかったように思います。
一番多く登場するベルのキャラデはディズニー風。
これはディズニーキャラクターを多く描いてきたJin Kimさんによるもの。
風ではなく、まさにディズニーで描いてきたアニメータによるものです。
このキャラデが、この映画を『美女と野獣』っぽいという感想になる原因でしょう。
実際、一緒に見に行った人はその感想になっていました。
演出というか、LOの取り方は細田作品らしいなと思いました。
川沿いを歩いていく横一枚絵なんかはまさにそうですね。
ルカちゃんの告白シーンでのやきもきするような男女のやり取りも笑っちゃいました。
”らしさ”が出ていましたね。
シナリオについては何度か見ないと理解しきれないところが多かったです。
なので1回ですべてを理解しようとするのは難しい気がします。
後半の映像を見て「もしかして前半で言ってたあのシーンのことか?」と思い出す場面が多かったので。
例えば竜の城に映る顔をつぶされた母の肖像画。
肖像画は最後にケイくんのスマホ画面と重なるんですが、ケイくんトモくんの家族構成、すずの家族構成の対比を考えると、何度もフラッシュバックしたすずの母親の最期のシーンは、すずが竜の正体に気づく伏線であったのでしょう。
と同時に、対比があると観客が気づくヒントでもあったと思います。
ルカちゃんが好きな人が実は…というのも、冒頭のシーンを思い返すと納得できます。
ただちょっと突拍子に思える部分もありました。
見知らぬ人間のアカウントの中身を知ろうとするのはネットリテラシーに反してますし、ジャスティスがやったようにルールがない世界で自分がルールだと言い張って他人のプライバシーを侵害しようとするのも犯罪です。
そういった部分はフィクションという言葉で片付けられそうですが、作品の影響力を考えるとちょっと良くないのかなとも思ったり。
逆に今の人たちにとっては身近な問題なのかなとも思ったり。
解釈は人それぞれなのがコンテンツですから、どう考えるかは観客次第に任せているところがあるんでしょうね。
ごく最近までの『未来のミライ』や『おおかみこども~』のように個人にフォーカスを当てていない、『サマーウォーズ』『時をかける少女』のような登場人物多めの作品でした。
アカウント50億の世界と、高知県のド田舎に住む女子高生とその同級生。
スケール感が違いすぎて現実のシーンがちゃちに見えるのは仕方ないかもしれません。
ある意味これもリアルな表現に思えます。
すずとケイ、ベルと竜。
2人とも母を亡くしたことで避けようとしている現実があり、また彼女たちなりに抗おうとしている描写がシンプルで分かりやすかったです。
何となく暴力の描写が軽いイメージになってたのはだからこそなのか、画面越しの演出だからなのか。
ここもある意味リアルだなーと感じました。
総じて、昔は非現実出来だと思えていたものが技術的に実現可能に近くなってきた時代のリアルさの表現の難しさを感じました。
どの範囲でリアリティを追求するのか、どの部分の表現を抑えるのか、苦心したことも感じさせるシナリオです。
もう一度見たいとは思わない、ではなく何度か見て理解してみたいなと思うお話でした。
ただやはり『サマーウォーズ』は越えられなかったかな~と…。
一個人の意見ですがね。
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