18日目 『竜とそばかすの姫』本編ネタバレあり

彼曰く、現代風”美女と野獣”(digital ver.)


 ***


『竜とそばかすの姫』細田守

鑑賞してきました。


心に傷を負った主人公が、仮想世界でみんなに嫌われている竜と出会い、自分と、そして世界と向き合い、未来に向けて歩き出す物語。


母親を亡くし、父親との仲も冷め切っている主人公・すず。

学校では目立たない存在で、同級生から憧れの視線を向けられるルカをうらやむように見つめる。

「ルカちゃんは太陽みたいな存在だよね」

隣でそのつぶやきを聞いている親友のヒロちゃんが冷めた声で返します。

「あんただってUの中では太陽みたいな存在じゃん」

それを聞いて恥ずかしがるすず。

「私なんて歌えないし、全然だめだよ」


彼女は<U>と呼ばれる仮想世界において、圧倒的な人気を誇るバーチャルアーティスト”ベル”の正体だった。

誰もが自分のために歌ってくれていると感じるような不思議な歌声とメロディで、ログインしてから瞬く間に”U”の世界で最も知られている存在に。

その人気を記念したコンサートライブの日。

自警集団”ジャスティス”に追われてライブ会場に飛び込んできた”竜”。

傷ついたように痣が体に刻まれた竜の姿にひかれたベルは竜の正体を知ろうとする。


一方現実では、すずはベルのおかげで自分に自信がついてきた。

母親を亡くして以来、母親のように見守ってくれていた幼馴染のしのぶへの感謝と募らせていた想いを伝えようとしますが、自分はやはりふさわしくないのではないかとまたふさぎ込んでしまう。

再び歌えなくなってしまった彼女は傷を埋めるように竜の秘密の居城に頻繁に通うようになる。


自分と同じようにつらい思いをしていることを、竜と触れ合うことで感じ始め、何とか力になろうとするが、竜を追うジャスティスと衝突。

居場所を追われた竜と離れてしまい、心配になったベルはさらに真相に迫ろうと、現実世界の竜と接触を図る。

多くの人の協力を得て、竜の正体と思われる子供を見つけるが本人かどうかを信じてもらえない。

そこで現実の姿を<U>で現し、本物であることを信じてもらう必要に迫られる。

現実の自分と仮想の自分、真反対の姿を見られる恐怖を感じていたが、現実、仮想の多くのファンに支えられて、ついに決意をする。


小さな声で歌いだすベル、震える声で歌い始めるすず。

その歌はしみるように<U>の世界に広がり、響きわたり、見守る人々の心を揺らし、感情を揺らし、世界の色を塗り替える。

そして現実の竜に信じられたすずは、彼の居場所を見つけ助けることに成功する。

彼・ケイくんは弟のトモとともに父に個室に閉じ込められた生活を送っており、暴力をふるう父からトモをかばっていたために、竜は傷ついていたのだった。


地元高知から横浜まで、夜にもかかわらず電車ですぐに向かうすず。

道中、父に「勝手に遠出してしまってごめんなさい」とメッセージをする。

「その子は困っているんだろう」とすずのしたいことを察してくれている父に感謝して、横浜に向かう。

ケイとトモのもとに着いたすずは、部屋から抜け出していた彼らを追ってきた竜の父に厳然と向き合い、2人を助けることに成功する。


2人の命を救ったすず。

その脳裏に浮かぶのは、見ず知らずの子供を助けるために命を落とした母の最後に見た背中。

無事に帰ってきたすずは最寄り駅のホームで迎えに来ていた父とホーム越しに向き合う。


「晩御飯食べるか?」

「うん」

「そうか」

「…ただいま」


不器用ながらも、今まで避けてきた嫌な思い出、気づかないふりをしてきた現実と向き合うことができたすず。

苦難を乗り越えた彼女は、再び歌いだす。

乗り越えた苦しみとつらさを前を向く力に変えて。

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