9日目 魚屋さん

彼曰く、ここ最近、近所で流行っているらしい。


 ***


私の近所事情で不思議なことがあるので紹介する。


夏といえば海。

海といえば水着。

太陽と波しぶき。

輝く水のきらめきに女は黄色い歓声を上げ、男は怒号を上げて踊りだす。

波の向こう、海の底から湧き上がる楽しさ。

光の筋をよけながら波間を漂い、ゆうゆうと泳ぐ自由度。

海面に揚がった時の解放感。

その気持ちばかりは変わらないと思う。

そしてまた、怒号のような雄叫びが上がる。


釣り上げた大物を持ち上げ、己の勲章として記録する。

鍛え上げられた肉体と、豪快な笑い声。

その姿はまさに男の生き様そのもの。

ビッグヒットを逃すわけにはいくまいと、躍起になって後から多くの男たちが続いて海に繰り出す。


釣り、それは男のロマンなのだ。


…というナレーションが聞こえる番組が多いのは、一獲千金を夢見た男たちの夢と希望と人生が詰まっているからなんでしょうね。

まさに生き様、かっこいいですね。


そんな人たちが担ぎ上げてきた魚が売られるがスーパーだけじゃないことを教えてくれるのが鮮魚店、魚屋さんです。

サザエさんで言うところの魚徳さん。

庶民の味方に思えますが、ザ・庶民の私、行ったことありません。

家の近くにできたらしいので行ってみました。


店頭には威勢のいい大将。

私より先に入っていった、これもザ・庶民のおじいちゃんに朝獲りの立派な魚を紹介していました。

その陰に隠れてどんなのがあるのかなーとのぞき見してみます。

ちょっと前に旅行で言った新潟で魚市場に行きましたが、あそこ同様生きた魚を見るのはワクワクします。

触るのは苦手だし、調理も三枚おろしすらできませんが、魚自体は好きなのでドキドキとワクワクです。

あまり長居するのもよくないので、店頭に置いてあった缶詰を2つ買っておさらばしました。

金華サバの味噌煮とナガスクジラの大和煮。

サバの方は言わずもがなですけど、ナガスクジラ…。

癖強そうですね~、でもご飯に合いそう。

お弁当にします、食べるのが楽しみですね。


期待に胸高鳴らせながら家路につくと、少し歩いたところで別の魚屋さんが。

 こんなところにあったっけか?

ポスターを見るとこちらもつい最近できたらしい。

魚屋、流行ってるのかしらん?

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