8日目 バス
彼曰く、え~荻窪駅~、荻窪駅~。
***
バスの停車場は不気味な場所。
バスは不安を掻き立てる乗り物だ。
よくわからない人に運転を任せて、行きたい場所まで連れて行ってもらえるけど、そこまでの道のりは決まっているし、だいたい遅れる。
時間通りにつくことなんてあるのかな?
時刻表通りに停車場まで来たためしがない。
もしかしたら私のバス運がよくないのかもしれないけど、バスの運がいいからと言って乗り心地が変わるわけでもなく。
バスの乗り心地は基本いいからいいけども。
でもだからこそ、ついうとうとしてしまうと降りたいバス停を逃してしまったりする。
車とか自転車とかと違って、自分の意志で引き返すことはできないから、あまりに離れてしまうと無駄な時間とお金を使うことになってしまう。
1バス停分ならまだしも、終点まで行かれてしまうと困る。
何時間歩けばいいのか。
大学の同期が飲み会後、電車内でつぶれて終点まで行ってしまい、次の日の朝まで無人駅で夜を明かしたと聞いたことがある。
ちょうど台風が過ぎた後で問題なく帰ってくることができたからよかったものの、あと数日前だったらあわや大惨事となっていたかもしれない。
そういう話を聞くと他の人が運転しているものに命を預けることが改めて怖く感じてしまう。
何より時間通りに来てくれないことが気に食わない。
こっちは急いでいるのに、時刻表と見比べても全然やってこない。
そんなに急なら走ればいいだけの話だけど、走りたくない。
ザ・自分勝手。
でも来てくれないバスも悪いと思うの。
いったい何をしていることやら。
最初はやきもきしていた私も、最近はバスをあきらめている。
タイミングが合えば乗ってもいいかな、そうじゃなければ歩けばいい。
健康第一スタンスになりつつある。
今日もタイミングが合わなかったので、家まで歩いている。
途中いくつかバスが私を抜き去っていく。
急いだりはしない、今更乗ってもあと数分歩けば家に着く。
きっと信号につかまって、結果的に歩いたほうが早いことになるんだから。
乗らないと決めたら乗らない方が無難なのだ。
「今日も私の勝ちだな」
信号待ちになったバスを抜き返しながら歩いていく。
すると対向車線のバスが目についた。
しばらく止まっていて一向に動こうとしない。
お年寄りがいるのかな?と思って横を通り過ぎるけど、中で動く人はだれもおらず、むしろ一番後ろの席に1人座っているだけ。
目の前の信号も青になっているのに、乗車口は開いたまま。
いったい何を待っているのか。
「えぇ・・・」
そそくさと立ち去りながら、改めてバスの恐怖を感じていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます