17日目 勝敗
彼曰く、確率は収束するという事実を教えてくれた先輩の話。
***
負けた。
今日の俺はもうだめだ。
盛大な負け、自然現象には勝てないのか。
せっかくこの前行ったパチンコで大勝かまして来たっていうのに、これじゃあ意味がない。
なんで雨なんて降るんだよ・・・。
俺はしがないサラリーマン。
ごく一般的な生活より、少し生活水準低めな生活を送っている。
彼女がいて、時々一緒に過ごす日々。
仕事は自分のやりたい仕事だから、苦労もつらいこともいろいろあるけど、楽しく過ごせている。
そんな俺の好きなことの一つに賭け事がある。
世の中には覚えるなと言われていること、のめりこむなと注意書きを張られている沼がある。
酒、女、ギャンブル。
いわゆる三禁だ。
欲望のままにこれらで遊ぶことを覚えてしまうと、どんどん深みにはまり抜け出せなくなってしまう。
世間にはびこる底なし沼。
そのくせこれらを覚えて晴れて大人になることができる、などという通説が生きているもんだから、大人にあこがれる子供が変に期待してしまう麻薬のようなもの。
昔からいる大人たちはずるい、これらを教えてもらえる社会だったんだから。
今の時代、そんなことを軽く教えてくれる人なんてなかなかいない。
いても雰囲気の軽い人たちだけだ。
その軽い人たちのおかげで無事俺もその部類に入ったことだけは感謝しているけど。
ギャンブルもいろいろ種類がある。
一通りやったけれど、一番手軽にやりやすいのがパチンコ。
うまく当たればずっと同じ台で回し続けることだってできる。
何発当てるかで勝敗は決まり、アタリを引けば儲け、大アタリを引けば大勝利。
回転数が上がれば勝つ確率は当然上がるが、同じく負ける確率も上がる。
大アタリになる確率はそのさらに下、隙間を縫うような低確率を引き当てる必要がある。
この前後輩がいい感じに当てていたのを聞いて、俺も仕事帰りにふらりと寄った。
最近行っていなかったからご無沙汰で、仕事も早めに終わって気分もよかったからちょうどよかったのかもしれない。
そしたら、溜まっていた運が解放されたかのように大当たりを引き当て、見事に5万ほど勝った。
これで朝来た時にみんなに自慢できる。
そう思って今日来たのに、、、なんで雨なんて降るんだよぉ!
ゲリラ豪雨明けてもう降らないって予報だったから洗濯物干してから来たのに、結局雨に濡れたよ!
もう今週3回目なんだけど!
もういやや、、、パチンコで運使っちゃった分がかえってきてるのかもしらん。
しばらくやめとこ、確率が変動してるから読めない。
次の洗濯は絶対晴れの日にやってやる。
+++
そして次の日、また先輩は雨に洗濯物を濡らした。
財布と洗濯物が潤った1週間だった。
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