4日目 『ブルーピリオド』

彼曰く、好きなものを好きっていうのって、こんなに怖いんだな。


 ***


『ブルーピリオド』山口つばさ


ここ最近気になっていた漫画の1つ。

仕事でやり取りしている人が関わると聞いていた。

仕事の話の他にも、たまには雑談交じりに話したい。

ずっと仕事の話ばかりじゃ詰まってしまうもの。

それってとってもつまらないことじゃない?

詰まるのか、つまらないのか、はっきりしてほしいけれど。


少なくとも件の漫画はつまらなくないと感じる。

全体的に静かな印象だけど、よくよく読んでみると熱い感情が散見される。

山と谷の差が激しい、見ごたえのある漫画。



主人公の矢口八虎やぐちやとらは高校2年生。

いわゆるDQNのような風貌ながら、人当たりが良く、早慶も余裕な好成績。

悪友たちとタバコや酒をたしなみながら朝までサッカー観戦な生活を過ごすも、

要領が良く、ノルマをこなす感覚で勉強や人間関係をこなしていた。

しかし達成感が得られない日々に退屈しており、

当たり障りのない大学に進学する未来もつまらないと思っていた。


ある日、美術の授業での忘れ物を取りに美術室に入ったところ、

美術教師の佐伯先生に将来の選択肢として美大進学を提案される。

アホらしいと思っていたが、ふといつものオール明けの渋谷の風景を見て、

感じたままの景色を言葉にして恥ずかしい思いをする。

そしてたまたま見かけた美術部長・森先輩の作品と、

「青く見えるなら、りんごもうさぎの体も青くていい」の言葉で、

見たままの景色、感じたままの色で、自分の価値観で表現する面白さを知る。


結局描き上げた1枚は不完全ながら、悪友たちや同級生にも褒められ、

絵を描く面白さに目覚めていく。

楽しいことだけして生きていくことに否定的だった八虎だが、

幼馴染の美術部員・鮎川龍二や佐伯先生の言葉もあり、美術部入部を決意する。



まだ全部読めてないけど、スタートから情熱がこもった人物設定。

ごく一般的な野心の持ち方だけど、それが美術、アートっていうところに、

読者は惹かれるんだと思う、やっぱり。

知らない世界に対する好奇心は、両手に余るほどのもの。

そして、好きなことをしている人は最強らしい。


無趣味だった八虎が好きなものを見つけ、のめり込んで、

いつの間にか描くことばかり考えている姿が、とても素直で、羨ましく見える。

きっとそれは、最強の組合せだからだろう。

未知の世界で、それが好きだと思って進んでいる人の姿の掛け算が。

新しい価値観、新しい描かれ方、新しい物語で肉付けされていく熱意。

”芸術系スポ根漫画”なんていう評価が失礼に聞こえるくらいだ。

別に根性でやっているわけではないだろうし。

”好きな世界で生きる系漫画”かな、これも適当か。


好きなことをしている人間は強い、いろんな作品で言われていることだ。

『ブルーピリオド』はその中でも少し異質なテーマに思う。

それもきっと、知らない世界だから。


好きなアーティストのYOASOBIともコラボしているほか、

アニメ化も決まっているらしい。

マンガ大賞2020の大賞にも選ばれた。

今後に期待したい作品、ちゃんと全部読みたいな。

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