28日目 もらいもの

彼曰く、欲しいものが手に入っても、要らないものが捨てられない。


 ***


先輩にモニターを貰った。

卓上モニター、すでにあるテレビよりも若干画面サイズは小さく、

でもノートパソコンよりは大きい。

使いやすいサイズと言えばそうかもしれないけど、

大画面で何かを見たいという注文には答えられそうもない、

そのくらいの大きさ。


きっかけは先輩の引っ越し。

「この1年はきっと忙しくなる」

そう言って会社の近くに引っ越したばかりの先輩。

実家の荷物を持ってくるにあたり、部屋の中を整理した。

長いこと使っていたモニターがあったけれど、今はあまり使っていない。

最近はやりのテレワークも、この業界じゃ広まりづらい。

そもそも働くのが好きで、会社にいるのが好きだから、

リモートでパソコンを使うよりも、会社に来て仕事をした方が、

現物をすぐ動かせるし、内線で連絡も入れやすい。

家を出る時にテレビがもらえそうだから、

贅沢しなければそのテレビだけで充分。

好きなゲームをするにも困らないから、モニターは手放したいかな。


引っ越しの手伝いで、家電量販店に付き合った帰りのステーキ屋さんで、

そんな話をしていた。

3月頭、やけに忙しそうな店内で、メニューもごちゃごちゃなテーブルに案内され、

ちょっと気分が害された後に耳よりのニュース。


私自身、テレビはある、ノーパソもある。

PS4もあるし、もちろん遊ぶからテレビは必要なんだけど、

最近はノーパソでYouTubeばかり見ている。

NHKはもちろん、民放なんてここ2年まともに見ていない。

完全に置物になったテレビ、そろそろ手放したいと思っていた。


でもテレビがないとPS4で遊べない。

ノーパソで遊ぶこともできるらしいけど、ガジェットマニアの改造だった。

機械いじりは苦手だからマニアの芸当ができるはずもなく、

むろんそこに労力を割きたくないのも事実。


つまるところ、テレビに変わる、ゲームで遊べるモニターが欲しかった。

まさに天恵、先人の導き。

私の徳が呼び込んだに違いない。


別の用事で会社に立ち寄った折、先輩が車で帰るとのことだったので、

一緒に乗って家の近くまで送ってもらい、

念願の新しいモニターをゲット。

中古だけどまだ使えるから大丈夫。


確かな重さを両手に感じながら、どう置こうかを考えて帰宅。

とりあえずローテーブルに置いて考える。

部屋の中にはモニターが3つ。

この時点でテレビは片付けているはずだったのに、

未だに壁際のど真ん中に鎮座する真っ黒い置物。


手放そうと思ってはや1年。

いつになったら私はテレビを処分する気になるんだろう。

タイミング的に無理に貰う必要はなかったかもしれないが、

ようやく部隊の整理が必要な時期が来たということか。

いい加減処分できるように準備しよう。


・・・たぶん来月の私がやってくれるよ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る