26日目 インターン

彼曰く、インターン=職業体験≠アルバイト?


 ***


年度も替わる直前。

新しい人を迎えるための準備でてんやわんや、

私の会社で慌ただしくなってきたころです。

慌ただしく見えるのは私のハンデはなく、別班の人たちですけど。

頑張れ、納期はもう目の前だ。


そんな折、まさかまさかのインターン生がやってきました。

インターン。

私にとっては耳馴染みのある言葉。

社会勉強をしようと思っている学生たちが、

自分の志望する業界、企業に赴いて、

実際の業務やプレゼン、グループワークを通して、

”会社で働く”、”仕事をする”という未体験のことを経験する。

アルバイトとは違う、一つ上のグレードをあなたに。

ホテルのパンフとかでも使われそうな謳い文句が、

学生時代に歩き回った企業説明会の大ホールの壁にたくさんありました。


まさかうちの会社もそんな謳い文句を使ったのでしょうか?

到底そんな余裕はないと思っていましたし、

そもそもこの業界でインターンなんて募集したところで、

応募してくる人が来るのでしょうか?

半信半疑、メールで通達された内容を見て驚きました。


来る・・・、私の班にも・・・。

しかも2人も来るらしい、随分奇特な人だなと思いました。

世間的に見ればブラックな企業、業界。

よほどの野心がないと行こうとさえ思わないだろうに、

何をもって志望したのか、気になるところです。


一方で、インターンを受け入れるということは、

インターン生にやってもらうことを用意しなければならないということ。


・・・一体何をすればいいんだろう?

私自身、インターンに参加したことはありますが、

たいていの企業はインターン用の疑似商品企画やグループワークテーマがあり、

学生が中心となって行うものばかり。

私のいる業界のように、長期間にわたって何かを作る仕事のインターンは未経験。

参加する側どころか、用意する側に必要なことも不明瞭。

何も見えないので、みんなで天を仰いでいました。


「インターンが来るって、知ってた?」

「え、そうなの?」

「インターンかー・・・。って何?」

「企業体験みたいな感じですよ。実際の業務してもらったりとか、ですかね?」

「実務って言ってもなー、作品持たせるわけにはいかないし」

「そもそも2週間じゃ何も進みませんよ」

「せいぜいカットが1つ上がるくらいじゃないですか?」

「確かに、それで作品とは言えないしな。ただのイラストだよ」

「でも何か用意しないとですよね・・・」


「「「うーーーーん」」」


未体験のインターン、想像が及ばない社会人。

予想も予測もしていなかった、急に表れた同時タスク。

普段の仕事もしながら、インターンの対応もせよ、とのこと。

果たして私たちは、期待と熱意とその他もろもろ、

頭いっぱい胸いっぱいな学生たちを、

満足させることができるのでしょうか?

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