11日目 シン・エヴァンゲリオン劇場版:||③
彼曰く、あんたバカぁ?
***
魅力からは逃げられないもの。
綺麗な女性、体格のいい男、優しい大人、甘え上手な子供。
ハマってしまうのは勝手ですが、そこから逃げることはなかなか難しい。
劇中でヤマアラシのジレンマについてリツコが話しています。
『ヤマアラシの場合、相手に自分のぬくもりを伝えたいと思って、
身を寄せれば寄せるほど、体中の棘で相手を傷つけてしまう』
人間にも同じことが言えると言っていますけど、
魅力の誘惑に対しても同じことがいえるんじゃないか?なんて思います。
魅力に近づけば近づくほど、その魅力が体に突き刺さって抜けず、
結果的にその魅力にとらわれてしまう。
・・・ちょっと違うか、どちらかと言えば麻薬の類ですかね。
エヴァの魅力と言っていいのか、惹きつけられる点と言えば、
ダークでシリアスな世界観とシンジ君の成長でしょう。
それこそまさに麻薬、ハッピードラッグ。
特に新劇場版ではダークな面が強く出ている気がします。
あの独特の世界観に浸れるのは確かにハッピーかもしれませんね。
テレビシリーズに比べてコメディ要素は少なめだし、
ハッピーを感じるシーンはあまりないですけど。
人間味のある生活感が観られたのは『破』くらいでしょう。
『序』でクラスメイトのトウジとケンスケとも仲良くなり、
さらに『破』で来日したアスカがミサトの家にまでやってきます。
加持さんも日本に戻ってきて水族館に行ったり、みんなでお弁当を囲んだり、
シンジ君の周りは少しばかりににぎやかに。
テレビシリーズの前半の雰囲気を思い出します。
どこか心を閉ざしていた少年が周囲に溶け込むように心を開いていく。
相手と触れ合うことのあたたかさ、嬉しさを感じている。
誰でも気兼ねなく見れるような内容です。
確かに『破』の評価が高いのも頷けます。
そして精神的にも明るく見れる内容が中盤まで続いたところでやってくる絶望。
「これぞエヴァ」「これぞ庵野」という感想も聞こえてきそう。
自分の周りの、守りたい日常を壊される。
何かすることはできたのに、何もすることなく逃げていた少年。
自分の力を見捨てて、世界まで見捨てようとしていた少年。
そしてまた守りたいものを目の前で失いそうになる。
『僕がどうなってもいい、世界がどうなってもいい。
でも綾波は、せめて綾波だけは、絶対助ける!!』
カッコイイです。
急にシリアスで難しい選択を迫られたのに、
弱くて逃げてばかりいた自分の膝を叩いて、自分の強い意志を宣言する。
これぞ主人公が成長する物語、成長したなシンジ君。
疑似シン化形態でガフの扉を開いてまでレイを助けた最後のシーンは、
なんというかもうすさまじかったです。
あんなに人と関わることを避けて、逃げていた少年が、
ようやく守りたいものを自分の意志で守ることができた瞬間ですから。
ラストシーンの挿入歌『翼をください』もいい。
弱い自分、逃げてばかりの自分を卒業する。
『序』ではまだ見られなかった本当の心の内をさらけ出した『破』。
シンジ君の成長を観るための2タイトルだったんだなと思いました。
でもついでに人間まで卒業しようとしていますからね。
封印されていたアスカが起きていたら間違いなく言っていたでしょうね。
「あんたバカぁ?」って。
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