18日目 SF

彼曰く、すこし、ふしぎ、そっと、ふれる。


 ***


SFというものには少し不慣れだ。

頭を使うことは確かに好きだけど、

難しい単語や専門的な計算、学術的見解が絡んでくると、

途端に訳が分からなくなる。


頭の中を流麗に流れる川を思い浮かべよう。

川は細く長く、どこまでも続いている。

歩いても歩いても先は見えず、早くなったり遅くなったりもする。

原理は分からない、でも突然そうなる場所がある。

思考の流れはとめどなく流れるけれど、

一気に流れる場所もあれば、ゆったりした場所もあるということだ。

そんな川に乗り越えられないほど高い壁や、

ずらすことができないほど分厚い壁が入り込んで、

流れがせき止められて溢れてしまい、爆発する。

混乱して、考えがまとまらず、

思考の方針があっちに行ったりこっちに行ったりしてしまう。

信じられないほど、不明確。

そんな感じ。


だから正直、不完全燃焼な気分になる。

せっかく面白いものがたくさんあるのに、

いろんなエンタメを見てみたいのに、

すべてを理解できないものがこの世にあるなんて。


でも私の頭を悩ませるSFの中にも、

私程度で理解の及ぶものもある。

一番の例はやはり『ドラえもん』。

藤子・F・不二雄が最も長く描き続けた児童漫画であり、

日本では国民的SFマンガの1つでもある。

日本アニメが世界的に評価されている今では、

世界中の子供にも知られている人気作だ。

未来から来たネコ型ロボットのドラえもんが、

主人公・のび太をあの手この手で助けてくれる。

誰もが思い描く、こんなものが欲しい、あんなことができたらな。

そんな願いを叶えてくれる、少し不思議な世界観。

子供向けということもあり、分かりやすくて面白い。

万人受けする、というのはこういうことだろうか。

誰にでも分かるように作るのはとても難しい。

そしてSFは難しいものだ。

難しいものと難しいものが合わされば当然難しくなるだろう。


だけど『ドラえもん』はこんなにも分かりやすい。

分かりやすくて面白い。

簡単で、楽しくて、ちゃんとエンタメしている。

考え方を変えるだけで、こんなにも捉え方が変わるのか。

せきとめられていた川の流れが、一気に解放されたダムのように流れだす。

思考が爆発して混乱していたときとは違い、

爆発したように面白さが炸裂する。

脳細胞1つ1つに新鮮な空気が触れてふわっとする。

新しい発見ができる。

それは子供のころから面白いと思ってきた、楽しい感覚。


他のSFも、本当は難しく考える必要がないのかもしれない。

抽象的な作品ならいざ知らず、ちゃんと考えれば理解できるのだ。

すこし、ふしぎ。

想像の先を行く、不可解な現象。

理解できれば、それは楽しい。

実は今までに見たSF作品も、ちゃんと理解できるのかもしれない。

今度見返してみよう。

すこしふしぎに、ふれるために。

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