5日目 日常

彼曰く、これが私の日常。


 ***


朝起きて

会社に行って

仕事する

帰ったらごはん

遊んでおやすみ

        松竹梅


そんな日常が帰ってくる。

土日を過ぎればそれと同じ感慨は抱けるものの、

今日はその勘を取り戻したという感覚があった。

普段ならルーティンとして感じていることではあるけれど、

やはり正月休みというのは特別なようで。

他の人と同様、自分ももれなく日常に返り咲いた気分を味わっていた。

昨日の宣言通り、今日から仕事始めとなるということで、

色んな人に年始の挨拶。

忙しそうな人も、暇そうにしている人も、

通り過ぎる人も、今になって出社してきた人も、

誰に対してもご挨拶。

どんな正月だったかの自慢話に奇怪譚、面白話しにソロ年越し報告。

最後に笑いが起きるのはご愛敬。

思い思いの年末年始を過ごし、皆さんゆっくりできたようで何より。

他にも挨拶しないといけない人はいるけれど、

今日が仕事始めではない人もいるので、

そうした人たちは出会った時まで取っておく。

年始の挨拶は取り置きできるからありがたい。

会話のきっかけとして使うことだってできるのだから。

でもそれも1月まで、それ以降の挨拶はいつも通りに戻すのがポリシー。

それまでに挨拶をしておくべき人には挨拶をしてから1月を終えたいもの。

それにこの時期に会えないなんて言うのはシャレにならない。

もし万が一ということがあれば挨拶なんてしている場合じゃない。

急な離別に対する耐性はついていないのだから、

せめて一言挨拶だけはさせてもらいたい。


そんな心配も今日のニュースのため。

またも緊急事態宣言が出るらしい。

小出しにするような対策でいったい何に通用するというのか。

去年4月の自粛期間は確かに奏功したかもしれない。

世間全体が自粛に慣れるために新たな環境を整える準備をし始め、

昨年末には多く職場で、リモートワークがすでに一般的になっているという話も。

昔は会社で働くことに意義を見出していた日本人が、

会社に行くことを厭い、家で働くという選択肢に現実味を感じている。

海外では一足先にその文化が根付きつつあったけれど、

自粛勧告は世間の認識を一変させて、リモートスタンダードになった。

世界が静寂に包まれる中、日本もその例に漏れず、

確かに世の中のルールを変化させていたのだ。

いつ途切れるかも分からない緊張状態。

この先の未来の不透明感は増すばかり。

不安に駆られ、その中でも自分のやりたいことを見つけようとする。

そんな生活が日常になろうとしている。

新たな年、本格的に人間全体が変わる分岐点にいるのかもしれない。

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