27日目 後輩

彼曰く、アイツはヤバい奴だ。


 ***


他部署の同期の後輩の話。


その後輩は1年目の新人君。

彼の上について教えている同期から聞くと、

2人の息は合っているようで、普段から一緒にいることが多いといいます。

”上手く教えればちゃんと使える奴になる、

面白い奴だし、上昇志向が強くて何にでも興味があるし。

一生懸命やってくれてるからありがたいな。”


そんな評価を下されている後輩君ですが、

最近になって評価が変わってきているらしいです。

同期といつもの先輩と一緒に夜ご飯を食べに行ったのですが、

彼の後輩君への評価は以前に聞いたものとは真逆のものでした。


「アイツはヤバい奴だ」


一言目で暴言とは。

どんだけヤバいことをやらかしたのやら、かの後輩君は。

確かに新人たちは何をしでかすか分からない。

何が分からないのか分からなくて動けないならまだいいのです。

教えて、失敗して、覚えて、その繰り返しでできるようになりますから。

でも何がいけないのか分かっていながら動かないのはタチが悪い。

手いっぱいで動けないならまだしも、動こうとしないのは確かにヤバいです。

自分もまだ2年目のペーペーなので大口は叩けませんが、

仮にも社会人なのですから、善悪の区別くらいはついてほしいもの。

果たして後輩君はどんなやらかしをしたのでしょうか。


先日取引先と電話がつながらなくなってしまった。

彼らの案件は納期は少し先なものの、現状スケジュールが半分以上圧している。

このタイミングで連絡が取れなくなるのは非常にマズイ。

契約なしと言われたらまた一から探さないといけなくなる。

そんな時間は彼らに残されていないも同然。

なんとしても連絡が取れないといけない。

困った後輩君は同期に相談。

「よっしゃ、助けたるわ!」と先輩が会社の電話、

携帯電話と、取りうる手段を使ってようやくつながった。

後輩君はそこまでする考えがなかったようです。

「出たやん」と話を終えた同期が横を向くと、

後輩はあやとりで星を作っていた。


「お前何してんねん!!」


同期もびっくりしすぎて笑ってしまったそうですが、

冷静に考えて、業務中、先輩に相談中、自分のやるべき仕事を先輩にやらせて、

自分はあやとりにいそしむとか・・・。

確かにこいつはヤバい奴だ・・・。


他にもエピソードはあるらしく、上司に指導を受けているときに、

机に置いてあったせんべいを開けて食べ始めたので、

「何してんねん!」と、上司もタジタジになりながら怒ったらしい。

あの上司は結構怒ると怖いんだけどな・・・。


本人的には何をすればいいか分からなくてテンパったとき、

冷静になるために手元で何かをいじっているのが癖なんだとか。

そのためのあやとりやお菓子と言われれば、まあ・・・。

納得はしないかな!


私の教えてる子がそんなヤバい子じゃなくてよかったよ、ホント。

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