19日目 冬服

彼曰く、そろそろ冬本番。


 ***


最近めっきり寒くなってきました。

昨日の長丁場の打ち合わせを終えた帰り道。

寒すぎて身長がちょっと縮みました。

首を引っ込めて、手はポケットに、肩をすぼめると背中が自然と曲がる。

傍から見れば仕事に疲れたニートみたいに見えたかもしれない。

失礼な、ちゃんとした正社員ですよわたしゃ。

仕事の仕方は時々ニートですけれども。

コロナでテレワークが推奨されてから在宅勤務の方も多いはず。

そんな昨今、ニートとテレワークの違いってあまりないのかもしれない、

見当違いな考えをしてしまう今日この頃。

正常な思考が働かないくらいには寒さに参っているみたい。


どの季節が一番好きかと問われると、冬という。

春も、夏も、秋も、嫌いなわけじゃない。

むしろ好き。

どの季節もご飯は美味しいし、自然が綺麗だし、

どれも過ごしやすい時間が長いから。

自分を自由にできる時間が長く感じて、それが生きている感覚に繋がってる。

でも冬はその時間が短い。

寒いときは外に出たくないし、出たとしても寒すぎてすぐ帰りたくなる。

自由を謳歌できていないって感じ。

それだと生きている感覚とつながらないんじゃない?ってなるかもだけど、

冬だけはそれが逆転する。

自由を制限された中で、いかに限界を超えて外に出ようとするか、

本能で嫌悪を示す環境に理性を持って臨む。

それって考えることのできる人間の特権じゃないか。

寒い中でもなるべく寒さを感じないように日の昇っている時間帯に出かける。

外は寒いけど建物の中で過ごすからコートの中は少し薄手に。

外で遊ぶ予定だから寒くなってもいいように防寒具の他にカイロを忍ばせる。

これはある意味サバイバル。

自然という敵にどう立ち向かうかが試されているのだよ、ワトソン君。

日本の冬は意外に寒いのだ。


ところで、寒いと人はもこもこになる。

毛皮のない私たちは寒さを肌から遠ざけるために、

他の動物の毛を使ったり、厚手のコートを使ったりする。

すると自然、人の体積は大きくなる。

手袋をする人も、マフラーをする人も、ニット帽をかぶる人も増える。

その見た目はだいたいもこもこだ。

街がもこもこで溢れる、それが冬。

だから私は冬が好き。

色んなものがシンプルになる夏は削ぎ落したなかにも個性が垣間見える。

夏が引き算なら冬は足し算だ。

足されるほどにカッコよさもかわいさも増す。

そして何より、もこもこになる。

もこもこは正義。もふもふも可。

世界にもこもこが溢れる冬。

雪の降らない東京でも、もこもこの世界を見ることはできるのだ。

もこもこ、いいなぁ。

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