25日目 パーカー

彼曰く、なんだかほっこりする。


 ***


子供っぽいと思うけど、なぜだか着てしまう服。


パーカー。


フードの中に何が入っているんだろう。


母親のエプロンの前ポケットにはビスケットが3個くらい入っているらしいけれど、

あの中にはいったい何が入っているのか。


だれかが拾った平たい石ころ。

着ている子が友達に貸していた消しゴム。

たまたま飛んできた野球ボール。


色んなものを入れて、遊ぶ小学校の帰り道。


もはや服というより、1つの遊び道具でした。


退屈な下校時間を面白く、無邪気にさせてくれる。


ときどき度が過ぎた遊びをして怒られましたけど。

生きたカエルを入れたり、死んだふりをしたセミを突っ込んだり。


全校集会、みんなの目の前で怒られていた子は、

傘の持ち手を引っ掛けて友達を呼び止めようとしたんだそう。


呼び止めるという目的だけが先行して、結果的に身の危険をもたらそうとする。

未来のこともまだ分からない子供には難しいと今だから思いますが、

公開処刑はさすがに酷だなあ。


羞恥と理由わけの分からない怒りでどうにかなりそうです。

今よりも100倍恥ずかしさの塊だった私だったら耐えられません。


そう考えると、人より引っ込み思案に生まれてよかったなと思います。

その代わり人間界で生きるのが大変ですけど。


ほどなく小学校ではパーカーを着ることが禁止になりました。

子供の判断力の低さと言うことの聞かなさと言ったら、

神も先生も恐れぬ勢いですからある意味正しい判断だと思います。


なので仕方なく部屋着として使うようになりました。

当時私が持っていたのは、前ジップがついているものだったので、

羽織りとして寒いときに活用していました。


少し暑く感じたら前を開ければいいし、

首元がひやりとしたらフードをかぶれば保温できる。


利点が多くて、寝るときにそのまま着ていることもありました。

起きてそのまま登校しかけ、親が焦ったことが思い出されます。


しかし中学校、高校とパーカーを着る機会は減りました。

制服が半分普段着だったので、私服が減ったんです。


インドア代表だった私が休日に友達と仲良くショッピング、

なんてことをするのは1年のうちに1回もないくらいのレベルでしたから、

最低限のものしかなく、パーカーはそのなかにありませんでした。


小学校の途中で大きめのパジャマを買ったものだから、

それで満足したというのも理由の1つです。


そのまま大学に入るわけですが、

ここで私の中で転機が訪れます。


パジャマ、着なくなったんです。


大人になったからなのか、大学デビューを家の中でいたかったのか、

そもそも寝る時の服装に頓着しなくなったからなのか、

理由はともかく、スウェット+パーカーが定番になりました。


そう、パーカー復活です。


まさかこんな形でパーカーと再会するとは。

しかもサークルで作っていたロゴ入りパーカー。


一体感もなにもない状況で、私の部屋着として活躍してくれました。


小さいときはジップ付きでないといけないと思っていましたが、

プルパーカーの着回しの良さはすごいです。


カチャカチャと金具の音はしないし、

寒いときチャックの隙間を縫うような冷えた空気は入ってこない。

お腹についているポケットは繋がっているので物を入れれるし、

流行のオーバーサイズのおかげで、不思議と温かく感じます。


最近はフードの形にまでこだわる企業努力を見ていると、

パーカーの有用性、おしゃれへの活用度、こなれ感みたいなものは、

普遍的で一定の地位を占めるまでに来ているということでしょう。


子供だった頃では感じられないことです。


服を楽しんで着ることができるようになったこと。

何が危険なことなのかの判別がつくようになったこと。


成長してパーカーの恩恵を受けるに値する考え方と生き方を知った今、

改めてパーカーを向き合う最近のファッション傾向。


純粋に見ていてほっこりするシルエットが作れるので、

一生続いてくれ、と叫んでいます。

ほんと、最近のは温かいんですよ。


もしまだ1枚も持っていないという人は、

1回着てみてから不要論を唱えてほしいです。


大きめパーカーを着た女子はかわいいぞ。(ほっこり)

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