3日目 秋到来

彼曰く、月を見る。心が上を向く。


春はてりたま。

夏はロコモコ。

秋は月見。

冬はグラコロ。


春夏秋冬、色んな色があるように。

私たちは季節を様々な形で認識します。

ときにそれは風の温度であったり、

木々から伸びる葉の色や咲き誇る花であったり、

町行く人の服装であったり、

スーパーに並ぶ食材であったり、

各店が売り出す季節限定の商品であったり、

あれやそれやこれであったり。


人それぞれで季節は変わる。

同じ季節のようであって、少しづつ違う面白さ。

その奥ゆかしさを否定せず、

それぞれの季節を楽しんでいる。

それにもかかわらず感じている季節は同じ。

どんな季節であろうとも、みんな同じ空気に包まれている。


日本人のいいところだと思います。

たかがいちファーストフード店の季節限定商品で体現しようとする精神。

なんにでも意味づけをしようとするその勇ましさ、潔さ。

歴代の偉人たちが見たら唖然とするかもしれません。

「そんな面妖な食物は見たこともない。

小麦の香りのするふわふわと頼りないものに、

鶏卵をまんまるに、まるで空に浮かぶ月のように焼き固めたものをはさんで。

家畜の肉を焼き固めたものもあるが、鶏卵との間のどろどろとしたそれは何だ?

いや、その鶏卵を粗く炒めた肉の下にあるものではない。

そちらも黒い粒粒とした、鼻をツンとつく刺激臭のするものも気になるが、

それよりも肉の上にある、桃色とも橙色ともとれないそのどろどろだ。

芳しく、どこか甘くて、よく香りを確かめれば酢のような酸味も感じる・・・。

こんなものをそなたら現代という名の未来に生きる者たちは食べておるのか?

時代とは実に不可解なものよ」

なんて。


お分かりの通り、今日のテーマはマックです。

まさに私のカレンダー。

私の季節はマックの限定商品と共にあるのです。

マックがある限り、春夏秋冬は訪れ続ける。

つまりマックがなければ、季節は巡りません。

年を経るごとに微妙に絶妙な変化をもって、

我々消費者を楽しませてくれています。

毎年違う衣装替え、ならぬ意匠変えをすることで、

諸行無常と思わせつつ、どこか違うことを主張してくる。

心ばかりの心配り、痛み入ります。


さて、秋。それは食欲の秋。

するべきは月見。日本の古き良き風習です。

中秋の名月、今年は拝めるのでしょうか。

去年の台風はひどく、落ち着く暇もなく。

今年の台風も何やら騒がしそう。

果たして腰を落ち着けて月を見ることはできるのだろうか?

そんな疑問も、すべてマックが解決してくれます。

「月を見る。心が上を向く。」

今年のキャッチコピーは素晴らしいですね。

少しばかり落ち込んだ気持ちも、

この言葉があれば乗り越えられそう。

時節柄、まだまだ外に出る、あるいは集まって宴会も難しいころ。

寂しさ悲しさを感じている私たちへの、ドナルドからの心づかいでしょう。

季節を感じるために月を見たい。

その願い、お店に行けば、叶います。


たとえ中秋ではなくとも、たとえ空模様が怪しくても、

夜、空を見上げれば、いつでもそこに月はある。

見えないことが不安になったり寂しくなってもいいように、

その手に月見バーガーを持っておくことをお勧めします。

目を落としても月見があれば、きっと心は上を向きます。

そうすればきっと、月があなたを見守ってくれるはず。

とはいえ食べすぎは禁物です。

去年月見バーガーを112個も食べたという猛者ほど食べる必要はありません。

1つでいいのです。

どうしても月を見たくなった夜。

マックに行けば買うことができます。

お手軽な月見。ぜひ。


ぜひ。

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