2020年8月

1日目 配達

彼曰く、配送も大変なお仕事なのよ。


8月1日。

夏、到来。


月が替わるとようやくその季節の訪れを感じます。

昔の人は季節ごとの景色や天気、

虫の声から花の香り、人の動きに年中行事、

果ては厨房にちょこんと置かれたおやつにまで。

日常の中に転がる小さな事柄を季語にして、

俳句や詩を詠んだりして遊んでいたそうです。


季語と言うことは季節の言葉。

生活の中に季節を感じることができるというのは、

感性が豊かでないといけないと思うかもしれません。

ましては行くなんて高尚な文化、

一般人には理解も難しかったりする。


ですがこんな非才な私でも、

こんなに日々の事柄で感じることがたくさんあるのですから。

優雅で高貴な言葉に見えても、

ちょっとした言葉が季語だったりするものです。

日本人の文化や自然を愛でる気性は、

知らぬ間に育まれているのでしょう。

梅雨明けと言う言葉を聞いて、本格的な夏を感じるのですから。


そんな梅雨明け宣言の今日。

空は青く、天高く広がり、

先々月から待ちわびた景色が頭の上にありました。

久々の太陽がまぶしくて溶けそうです。

少々用事があって外出。

正直カンカン照りの太陽の下、

いかにも熱そうなコンクリートの上を歩けるほど、

私は強い人間ではありません。

ついこの前まではよくできたサウナのようだった世界が、

今度は天然の電子レンジですか・・・。

世界は少しずつ家電製品化が進んでいるようですね。

いい天気なのもあって今日は洗濯物がたくさんです。

そのせいで着るものが少なく、

今日に限ってタイトなもの。

汗で湿った服が肌に張り付くのは目に見えています。

自動保湿パックなんていらないです。

マスクをつけるのも鬱陶しくて嫌なのに、

服にも気を付けないといけないなんて困ったものです。

加えて外を歩き回るようなご時世ではありませんが、

急遽向かわなければならないので致し方なし。

我慢して出かけることにします。


そして用事を済ませた帰り道。

1つの失敗に気付きました。


お届け物があるという通知が来ていたことを!

しかも配送状況を知らせてくれる自動通知によると、

既に配達に伺ってきてくれているらしいです。

てっきり明日だと思っていたので申し訳ないです。


すぐに再配達の依頼をしました。

こういうことがあるから外BOXのある家に住みたいんですけどねぇ。

国もケチっていないでもっとお金を市井に回してほしいものです。

その方が絶対経済回りますし。

もうちょっと稼ぐつもりでいないといけないのは分かっているんですが。


しかしこういう失敗は何度も繰り返すとメンタルがやられます。

何しろ今年4回目。

しかも毎回重たいもので、ちょっと重要品目。

なので手渡しでサイン必須なんです。

定期的に購入するものだから分かっているはずなんですけど、

不器用で自堕落な性格が祟っているんでしょうね。

余罪はたくさん、追及已む無し。

そのうち野良のクロネコに怒られるかもしれません。

配達員さんの生霊とかに憑りつかれて。


大学の時にアルバイトでピザ屋の配達員をしていた友達が言っていたんですけど、

知らない人の家を訪ねる時っていつも勇気がいるらしいです。

不審者に思われても行けないし、かといって仕事は終わらせないといけない。

家っていうのは少なからず当人の素が見えるところだし、

心を無にしても気を抜くとじろじろと見てしまって失礼なことをした気になる。

万が一それが知っている人の家だったらなんだか恥ずかしい。

とかなんとか。


ほええ、という感じで聞いていました。

あんまり気持ちは分かりませんが。

でも今日みたいな炎天下を走り回ったり、

不在の時にもう一度配達をしないといけないのは、

何とも面倒で私向きではありません。

でもそんな業界で活躍してくれる人がいるからこそ、

こんな世界でも回っているんだ。

ついつい便利で使ってしまうから忘れがちだけど、

後ろで汗水流している人がいることを忘れてはならない。


しみじみと感謝の念を込めてそんなことを考えながら、

自分の領収書のサインを間違えました。


今日も楽しい1日でした。

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