23日目 夜更かし

彼曰く、ときにはいけないこともしてみたくなる。


先輩たちと久しぶりのご飯に行った日。

実は帰りにまた誘われた。

今度のお誘いは夜の会。

久しぶりの肴と酒におぼれてみる。

それほど強くなくても、

誰かと飲み、食べる歓びは懐かしい。

近頃の働き方改革の風潮で出勤タイミングの合わない私たち。

こういう時だからこそ話せることもあり、

こういう時だからこそ話したいこともある。

あれやこれやを話すうちにすっかり夜。

勉強ばかりが楽しみだった昔と違い、

大人になって楽しみの種類は増え、

質もそれぞれ深くなった。

まだまだ明るい店の中。

話も笑いも光にあふれ、

夜の深まる外も気にならなくなる。

そうこうするうちに夜は深みを増し、

時間の頃もリセットされる。

終電間際の冷たいホーム。

雨上がりの冷えた空気が、

熱にうなされた頭と体を包む。

今夜は遊びすぎてしまった。

実家にいた頃は怒られることも覚悟の上だったけれど、

今では叱ってくれる人も少ない。

人がいないとつまらないし、

寂しく感じるのは本能みたいなものかもしれないのに、

人気の少ない電車がどこか実家のように優しく見える。

普段は乗るのも億劫になる乗り物。

少し前までの私であれば、

目に映すのも、耳に入れるのも嫌になるのに、

今では懐かしさと安定を感じる。

足元に轟く金属がレールを進む音、

規則的で、機械的なルーティンが、

心地よさを思い出させてくれる。

たった一駅の移動だけで、

前までは日常と感じていたことも素敵な体験に感じる。

お酒が入っているからかな?

それとも夜が更けてきたからかな?

久しぶりにお金を使う機会が多かったからかな?

こっそり使いすぎたことをヤバいと思っているからかな?

…最後のは露骨かもしれないけれど。

ヤバいと感じる気分はなかなか消えてくれないもの。

解放感と倦怠感、それと少しの興奮で、

まだまだ気分は上がり調子。

日付も変わってしまったというのに、

これからが本番という感覚。

このまま帰っても眠れる気配がない。

こういう時はいっそ起きっぱなしでいた方がいい。

歩いている間に酔いは覚めても、

体はゆったりと落ち着きを求めているらしい。

家に着くころにはぐったりと、

ベッドに吸い込まれるように玄関を抜ける。

夜更かしは悪いことと言われてきたけれど、

こんなにワクワクする遊びもない。

睡眠の大切さも分かってきた年頃だけれど、

大切なものを犠牲にして遊ぶことの面白さも知っている。

大人の私には、どちらかを選ぶ自由がある。

眠れぬ人も、眠りたくない人も、眠りたい人も、

なんだかんだ言ってやってしまう遊び。

ある意味精神の安定剤にはなるが、

良薬は口に苦し、甘い薬はたいてい劇薬。

やりすぎは禁物なのでございます。

お供にYouTubeで見つけた生放送のアーカイブ。

話に山も谷もある、時間の流れが緩やかに感じるそれも、

大切な睡眠時間を削ぎ取っていく。

やっているうちはハイになるけど、

やりすぎは禁物なのでございます。

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