第61話 恋人+海=?
「なあ、
ランチ後、テントで休んでいた俺は同じく隣に座っていた愛奈ちゃんに声をかける。
「なんです? おにーさん」
「恋人と海って、何したらいいんだろうなぁ……」
視線の先には海辺で初音や御代とじゃれている恋人、
気づけば、愛奈ちゃんが「なんだこいつ……」とでも言いだけなジト目でこちらを見つめていた。
「バカですか。バカなんですかおにーさんは」
なんだこいつどころではなくバカだった。
何気に厳しい妹様だ。しかして、今までろくに海に来たこともない。その上友達もいないボッチにいきなり海に来ていちゃこらしろという方が無理ではないだろうか。
二人だけの時間は作ろうなんて言ったものの、初音たちがいるこの環境に甘えている俺がいる。
もちろん、今日という日のために色々と下調べはした。イメトレだってした。
しかしそれは所詮、妄想の域をでない。現実になってみれば何の役にも立たなかったのだ。
水着の彼女が見れた。それだけで頭はパニックである。もうこれで本日の任務は完遂したと言っても過言ではない。いや過言だ。彼女を楽しませることが出来なければ、何の意味もない。
初音たちと遊んでいる結愛は楽しそうだ。でも、そうじゃない。他でもない俺が、結愛を楽しませたいのだ。一緒に海を楽しみたいのだ。
しかしやっぱり、その方法がわからない。
「はぁ~。もうっ、さっきはカッコイイと思ったのにこれじゃ訂正したくなっちゃいますね~。いいですか、おにーさん?」
「お、おう……?」
愛奈ちゃんは人差し指をこちらへ向けて、ぐいっと顔を寄せる。
「結愛ねえは、おにーさんのことが好きなんです。おにーさんにゾッコンなんです。おにーさんがしてくれることなら何でも嬉しいんです。おにーさんと一緒なら、何をしていても楽しいんです」
「な、いや、ええ? それはさすがに言いすぎじゃ……」
「言いすぎなことなんてありません! 他の女のことなんて知りませんが、結愛ねえはそういう女の子なのです! おにーさんが結愛ねえのためにしたことなら、なんだって許されるのです! なんだって喜んでくれるのです! おにーさん全肯定の激重ギャルゲヒロインなのです!」
「ギャルゲヒロインて……」
明らかに言葉がすぎる。そんな論調だった。
しかし愛奈ちゃんがふざけているようにも見えない。
「おにーさんは、海だからって難しく考えすぎなんじゃないですか? いつもと違うことをしようとしていませんか?」
「考えすぎ……? そうかな」
「海だからって、むりにはしゃがなくてもいいんです。そういうのはおにーさんらしくありません。結愛ねえはまあ、テンションおかしくなって何しでかすか分かりませんが。でも、いつも通りの二人でいいんです。大好きな人が、自分と一緒にいてくれる。それだけで、とてもとっても、嬉しいんですから」
言い切ると、愛奈ちゃんは海辺へと視線を移す。つられてそちらへ目を向けると、ちょうど初音と御代の姿が見当たらなくなって結愛はひとりになっていた。
「さあ、どうしますか?」
愛奈ちゃんは激励するようににっこりと笑って問いかける。
さすがに、ここまで舞台が用意されて何もしないなんて選択肢はない。
「行ってくるよ」
「はい。行ってらっしゃいませ、おにーさん」
俺は恋人の元へ駆け出した。
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