第59話 ビーチサッカー2
「残り一分でーす!」
審判を買って出た
時間はあとわずか。ここまでのスコアは1-2でこちらが負け越している。
しかしそれでもよくやっている方だ。相手は運動神経も言わずもがなの
対するこちらは運動神経が並レベルの受験生である俺と運動神経が残念な
戦力差は歴然。
想像以上に運動ができるらしくちょこまかと動き回る愛奈ちゃんのおかげで辛うじて試合になっているという状況だ。
あとは、なんだかんだ言いつつ長谷川が手心を加えてバランスをとっている感じだろうか。それは無性にムカつく。
そうこうしているうちに残りは30秒ほど。
初音からボールを奪った俺はすかさずそれを大きく前線へと蹴り込んだ。
前線には結愛と愛奈ちゃんがボールを待ち構えている。対する敵のディフェンスは長谷川ただひとり。
技術なんて皆無のこのチーム。
出来るのは運任せの速攻カウンターだけだ!
「わ、ととと……」
なんとか愛奈ちゃんがボールを押さえる。
しかし目の前にはすぐ、長谷川がディフェンスに入った。
「行かせないよ、愛奈ちゃん」
「うぅ……、そ、それなら……結愛ねえ!」
愛奈ちゃんはゴール前に突っ立っていた結愛に向けてボールを蹴る。ちなみに、このビーチサッカーにオフサイドなんていう概念はない。
「え? え? 愛奈!? ここでお姉ちゃん頼っちゃうの!?」
「大丈夫! あとはゴールに蹴り込むだけだよ!」
不安気にバタバタする結愛に向かって愛奈ちゃんが叫ぶ。
結愛としてはもう完全に自分がお荷物であることは分かっていたためか、ボールが来るとさえ思っていなかったらしい。
しかし、その分相手のマークも来ていない。完全にフリーだ。
本当に、あとはゴールへ蹴り込むだけ。
「いけ! 結愛!」
俺もはるか後方から叫ぶ。近くでは、初音も諦めたように結愛へ声援を送り、如月に怒られていた。
声に反応してちらと、不安気な結愛がこちらに視線を寄こす。
俺がそれに頷いて見せると、結愛の顔も少しだけ晴れた気がした。
そして次の瞬間、同点弾が放たれることを誰もが確信する中で結愛は足を振りかぶり――――。
しばしの沈黙の後、試合終了の笛が響き渡った。
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