第41話 ラーメンデート。
テスト最終日、最後のテストが終わり放課後を迎えた。
テストの結果については今考えたって仕方がないだろう。あとは結果を待つばかりだ。
今考えるべきは、今日これからのこと。
そう、結愛とのデートである。
テストの日は午前放課であるため、時刻は昼だ。
まずは、以前から話していたラーメン屋へ行くというのが今日の予定である。
学園をでると、校門のあたりで結愛が待っていた。
少しだけ周囲の視線が集まっていたが、俺が来たのに気づくと興味を失ったかのように皆視線を外した。俺と結愛の関係はもう周知の事実となっている。
「悪い。待たせたか?」
「いえ、今来たとこです」
「そうか。じゃ、行くか」
「はい♪」
そんなお決まりのやり取りをわざわざ校門前でして、俺たちは並んで歩き始めた。二人の手は自然と何かを意識するまでもなく繋がれている。
結愛が嬉しそうにこちらに微笑めば、俺もへたくそながら微笑みを返す。
野暮な会話はない。もちろん、終わったばかりのテストの話題など出すはずもない。俺たちの間にあるのは、二人だけの空気のみ。
俺たちもカップルらしくなってきたものだなあと思う。
少しずつ、少しずつ、俺たちは同じ速度で、同じ景色を見ながら、前に進んでいた。
◇ ◇ ◇
「な、なおくん……?」
「どうした?」
「いえ、その、めっちゃ路地裏なんですけど本当に道あってるんですか……?」
「大丈夫だ、問題ない」
決してフラグではない。そんな装備で大丈夫か? 彼女を連れてるんだぞ大丈夫に決まってんだろ。決してフラグではない。最高の彼女を連れているのだから。
というのは置いておいて、俺たちは少し商店街から外れた路地裏を歩いていた。
もちろん、俺たちの今日のデートの目的地、ラーメン屋を目指してだ。
俺は今日のために結愛をどこのラーメン屋に連れて行こうかと、必死に考えていたのだ。
デートっぽい雰囲気になれる店はどこだろうか、と。
女の子でも気に入りそうなラーメンを提供する店はどこだろうか、と。
季節は夏であるため、あまり行列の店は望ましくない。熱中症とか、洒落にならないからな。
そうやって、結愛とのラーメンデートにふさわしい店を考えた結果がこの路地裏であった。
「お、ここだ」
「よ、よかったぁ……」
目の前にはこじんまりとした店構えのお店がひとつ。暖簾には「ラーメン」と書かれている。
結愛はその暖簾を見て、安堵のため息をこぼした。
いや、俺のこと信用してなったでしょ結愛さん。ぜったい迷ってると思ってたでしょ。俺は基本地理に弱いが、ラーメン屋の場所は知り尽くしている。迷うはずなどないのだよ……。
「ここがなおくんおすすめのラーメン屋さんですか?」
「ああ、まあそう……かな」
俺のお気に入り度ならこの町で3番目くらいだろうか? 彼女とのデートならここがベスト、であると思う。
それにここで気に入ってもらえれば、1番2番の店に行く機会もあるだろう。
何事も最初が肝心なのだ。もう路地裏のせいで印象悪いって? そんなこと知るか。問題は店内の雰囲気とか、味だ。
「んじゃ、行くか?」
「はいっ。とっても楽しみです♪」
俺は結愛の手を引いて、その暖簾をくぐったのだった。
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