第36話 妹再来。
「どーんっ!」
放課後。急いで校舎を出ると、セーラー服の少女が物凄い勢いで抱きついてきた。
俺はその小さな身体を抱きとめる。
「うおっ。ま、
「お久しぶりですっ。おにーさん!」
顔をぐりぐりと俺の腹あたりに押し付けてくる愛奈ちゃん。
ちょっやめて。そんなふうに抱きつかれるの慣れてないから。あとやっぱり周りの視線がキツいから。
「……ど、どうしたんだ? こんなところで」
「今日の愛奈はおにーさんのナビゲーターですので! おウチまでご案内します!」
「お、おう……」
やっぱりそういうことか。愛奈ちゃんといい長谷川といい、俺の行動は簡単に読まれているらしい。
何を隠そう、俺は結愛のお見舞いに行くつもりで急ぎ校舎を出たところだったのだ。
しかし美咲家の場所が正確に分かるわけではなかったので、愛奈ちゃんが案内をしてくれるのは純粋にありがたい。
「愛奈ちゃんは気が利くなぁ。よろしく頼むよ」
「はい! 愛奈にお任せください!」
そうして自然と俺の手を引っ張って歩き出す愛奈ちゃんに続いて、俺は歩き出したのだった。
✳︎
「そういえば愛奈ちゃん」
「なんですか? おにーさん」
コンビニに寄って適当な物を買い、美咲家へ向かう途中、俺は忘れない内にと思い愛奈ちゃんに切り出した。
「おにぎり、ありがとな。美味かった」
「愛奈はおにーさんの2番目のオンナですから! 当然のことをしたまでです!」
ふふんっと無い胸を張りながらも、嬉しそうに顔がにやけている愛奈ちゃん。
うむ、お年頃なせいか少し背伸びしがちなのもかわいい。
俺はとりあえずその可愛らしい頭を優しく撫でてあげた。結愛よりもさらに頭の位置が低くて撫でやすいかもしれない。
「ふにゅぅ…………あっ。おにーさん、あそこですよ。あそこが愛奈と結愛ねえのおウチです!」
「ん? お、おう。そうか」
「あっ……」
愛奈ちゃんの頭から手を離すと、愛奈ちゃんは少し名残惜しそうにこちらを見た。
だがすまんな……彼女の家を前にしておにーさんにはもう余裕がないんだ。
冷静なフリをするだけで精一杯なんだ。
「こ、ここここここここが結愛の家か……」
「おにーさん? ニワトリさんの真似ですか?」
ごめん、冷静なフリすら無理だった。
「だ、大丈夫。大丈夫だ。俺はできる子かわいい子」
「……? おにーさんはカッコいい子ですよ?」
「っ!?……お、おう。地球がひっくり返るレベルの新事実だわ……」
「そんなことないです。結愛ねえもいつも言ってますし、愛奈もおにーさんはカッコいいと思います」
「マジかよ……」
この姉妹には何かしら間違ったフィルターが掛かっているのではないだろうか。
俺はイケメンじゃないよ……?
というか、結愛はいつも愛奈ちゃんにどんな話を……?
だがそんな疑問はとりあえず置いておくことにして、俺は一番重要なことを愛奈ちゃんに問いかける。
「こ、こほん。ときに愛奈くん」
「は、はい。どうしたんですかおにーさん、呼び方変わってますよ?」
「今、家にご両親はいらっしゃるのかな?」
「いないですよ? 夜まで帰ってこないです!」
「そ、そうか……それは何よりだ」
いよっしゃああああ!! これで勝つる!
「結愛ねえも寝てると思いますので、愛奈とおにーさん、2人っきりですね……?」
え? あれ? なんかまた危ういこと言ってない? なにこれ? 事案?
い、いや俺はお見舞いに来たのだ。1人きりで寂しい思いをしているであろう彼女に逢いに来たのだ。
「で、では行こうか」
「はいっ。愛奈、オトナの階段登ります!」
こうして、突発的な彼女宅への訪問が始まった。
〜〜〜〜〜
次回、結愛視点にするのもありかなぁとか。まあ、書きやすそうな方で書くます。
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