第3話 交際1日目・登校。
「せんぱいせんぱい」
登校中。
きょろきょろと落ち着かない様子で黒髪を揺らしながら隣を歩いていた
「どうした?」
「なんだか、不思議な気分だなぁと思いまして。ムズムズするというか」
「まあ、確かにな」
周りの視線も2人占めにしてるしなぁ。
学園に登校中の生徒たちの視線はこっちに釘付けである。
俺は気疲れがヤバい。
不審そうにこっちを見るなよぉ……。
そんなに学園一の美少女が俺の隣を歩いているのがおかしいですか?
おかしいですよね陰キャボッチでごめんなさい!
しかし、美咲が言っているのはそういうことではないだろう。
「せんぱいもですか?」
「そりゃあ……こ、恋人との初登校なわけだし?」
「うひゃっ。な、なんですかそのむず痒さ全開の
「お、おまえがうちまで迎えに来たからこうなってるんだろうが!」
「そ、そうですけどぉ〜。だって、はやくせんぱいに会いたかったんだもん……」
袖を掴んだままシュンと涙目で肩を落とす美咲。なんだこの可愛いイキモノ。
朝から俺に会いたくてうずうずしてたのかなぁ。いやもしかしたら夜から? 昨日のバイトを終えてからずっと?
それで勢い余ってうちまで来ちゃったの?
なんだこの可愛いイキモノ(2回目)。
「そ、そういえばせんぱい。私たち、こんなふうに隣り合って歩くのって初めてですよね」
美咲が気を取り直したように言う。
「だな。今まではほとんどバイトでしか話さなかったし」
「ですです。……きょ、今日からは学園でもどんどん会いに行っていいですか?」
「俺はいつでもお一人様だからな。ご自由にどうぞ」
「じゃあじゃあ、今度からは私とお二人様ですね♪」
「お、おう……そうだな」
美咲の煌めくような笑顔にたじろく俺。
いい加減慣れろよ。いや陰キャボッチにあの笑顔はちょっとね、破壊力が高すぎる。
小悪魔のくせに天使のような神聖さを兼ね備えている俺の彼女は最強ではなかろうか。
悪魔の力に支配されて闇堕ちとかしないように俺がしっかり見ていなくては。
「どうしました? せんぱい? 私の顔に何か付いてますか?」
「いや、美咲の属性について考えていた」
「なんですかそれ。いきなり彼女の性癖について探ってたんですか変態さんですか」
「ちげえよ! 俺はただ、美咲は小悪魔で天使だなぁと思ってだなぁ……」
「いや余計意味わかんないんですけど?」
「いいだろ。悪魔で天使。闇と光の両属性持ちだ。危うい感じがして厨二心をくすぐられるだろ」
「はあ……」
「何言ってんだこいつ」って感じのものすごい呆れ顔をされた。オタク趣味は分かってもらえないらしい。
まあいいけどね?
彼女に趣味を押し付けようとか、そんなこと思わないし?
ただ俺がちょこっと寂しいだけだ。
そんなくだらない会話をしていると、早くも校門が見えてくる。
なんだか、時間が経ってしまうのがとても早く感じた。
それからふと周りを見ると、生徒も増えてきてなおさら注目が集まっていることに気づいた。
ほとんどの反応は「
さすがに自虐入りすぎ? いやこんなもんだよ、たぶん。
あまり目立ちたくはないが、学園一の美少女である美咲といるとどうしても注目はされる。
しかしこの恋人関係には美咲から面倒くさい男共を遠ざける目的もあるわけだし、見られるに越したことはないだろう。
とりあえずは、このばら撒いた大量の油に火が回らないことを祈るばかりだ。
「ではでは、せんぱい。またです」
靴を履き替えて学園に入ると、美咲が少しだけ寂しそうに、手を小さくにぎにぎと振りながら言う。
「おう、ちゃんと勉強しろよ〜」
「睡眠学習ならバッチリです♪」
「おい」
美咲は追及を避けるように「あはぁ〜。冗談ですよ〜」と笑いながら俺に背を向ける。
俺は3年の教室へ。美咲は2年の教室へ向かわなければならない。とりあえずはここでお別れになる。
「せんぱい、お昼休みは楽しみにしておいてくださいね♪」
美咲はこちらを少し振り返りながらにやっと小悪魔っぽく笑うと、2年の教室へ向かって駆け出したのだった。
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