人工衛星 サンタのおとしもの
日々人
人工衛星 サンタのおとしもの
地球上を周回する一つの人工衛星がある。
民間と行政機関が共同で開発した衛星「サンタ」だ。
本当はアルファベットで綴る名があったのだが、運営側がのちに変更した。
その名の由来は、衛星の形からきている。
サンタクロースがソリに乗り、トナカイに引いてもらっているように見えるという声から採用されたのだが、そのソリにあたる部分の後方にはふくらみがなく、当時はプレゼントを落っことしたサンタクロースと揶揄された。
この衛星。名目上は、自然観測はもとより車、ドローン交通の円滑化を図ることを目的として打ち上げられた。
しかし、現状としては繊細なカメラで上空から社会を監視することで実績を上げている。
人々から重苦しい監視社会への不満の声が寄せられる中、そこから運営側はイメージアップを図り、全国民参加型のイベント「サンタのおとしもの 宝くじ」をなぜか立ち上げたのだった。
・・・・・サンタのおとしもの 宝くじ 概要・・・・・
・サンタのおとしもの 宝くじ エントリー方法
①道端に落ちている、おとしもの(ゴミ)をみつける
②デジタルカメラ・スマートフォン等で撮影してから、収集ゴミ解析サイト『Hirotter』に画像をアップする(要会員登録)
③アップ完了画面に表示された分別番号に従って、市区町村指定の専用分別ボックス『サンタさんのプレゼント袋』に、ゴミを入れる
(その場にゴミを放置したままにしたり、専用分別ボックス以外に捨てるとエントリーは取り消されます)
・サンタのおとしもの 宝くじの対象期間
年明け~大晦日の晩PM6:00までのほぼ一年間
・サンタのおとしもの 宝くじの抽選日
毎年、年末の大晦日の晩にTV、専用サイトの同時生中継で抽選会が行われる
当選は1等賞(賞金3億円)から1000等賞まであり、関連番組では500等賞から順に発表
ー ー ー ー ー
「え~みなさま、今晩は!
今年も、残すところあと6時間を切ったということで、お待ちかねのあの時間がやってまいりました!
サンタのおとしもの抽選会!
いよいよ、はじまります!
…ということでね、大晦日から年明けまで、年越しするかたちで生放送させていただきますので、…もう最後の最後まで、みなさん!ホントに何があたるかわかりませんからねっ!
今年最後の福、または年はじめの福を信じて!
え~みなさん、あきらめずにこの番組を、最後までご覧いただきたいと思います!」
「サンタのおとしもの抽選会」に国民は今年も噛り付くように見入っている。
衛星「サンタ」から送られる映像は抜群の解析能力によって、人々の行動はもちろん、地上でうごめくもの、静止しているもの、生物から小物に至るまで、ありとあらゆるものが管理されている。
そんな中には、この国の産業廃棄物から道端などに落ちている「ゴミ」のデータも含まれている。
上空から死角となっている場所は街頭監視カメラ、室外監視カメラで補うことで、おおよその国内の動きを把握できている。
大みそかの今宵。
この国の上空で撮影した「サンタ」視点から、徐々に大地に迫っていく形で当選くじとしてのおとしもの(ゴミ)が発表される。
参加者全員が断続的に固唾をのむ、長き一夜がこうして幕を開けた。
ー ー ー ー ー
「…おい、今の320等賞の画面に映ったピアス、キミがこの前行った旅先で無くしたモノに似ていないか?」
「思った⁉だよね?わたしも思った」
「…あ、ほら。専用サイトでおとしもの検査したらその近くの集積場のE-1213のボックスで回収って…あ、まだ保管されてるみたい。問い合わせてみようか?」
「うん!お願い。あぁ、よかった…これでわたし、今年思い残すことはないわ。…何だかホッとしたらもう眠くなってきたんだけどさ…」
「え…もういいの?あんなに二人してがんばってゴミ拾いしたのに?…俺は、1等賞とはいかなくても…あ~なんか、たとえば海外旅行とか当たらないかなぁ…無理かぁ…」
ー ー ー ー ー
まもなく、この国は新年を迎える。
私が上空から見下ろすこの青い星。
私には見えないものはないはずなのに、人という生き物には国境という線引きが多々あるそうで、それがいまいち把握できていないことが悩みだ。
そんな様々な国の中で、特にこのひと月くらいに集中してゴミが観測しにくくなる不思議な国がある。この足元の国だ。
大みそかの晩に。
私ははるか上空から、連携している地上の監視システムを通して、とある二人の様子をうかがっていた。
先ほど、関連サイトに問い合わせをしてきた者の家庭だ。
ほぉ、どうやら彼の望みは…。
- - - - -
という、妄想話でした。
人工衛星 サンタのおとしもの 日々人 @fudepen
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます