効率のいい狩場を見つけられた件
「発動,炎神」
弘樹がそう言うと弘樹が炎の化身になる。これには対峙している蜘蛛も攻撃するのをためらっているようだ。そして両者動きだす。勝負は一瞬。蜘蛛の攻撃より弘樹の攻撃の方がわずかに速かったようだ。弘樹が蜘蛛に,デスタランチュラ(Lv450)にぶつかる。デスタランチュラは一瞬の間の後,燃え塵となった。
『レベルが上昇しました』
「よっしゃ。これで進化までの道が見えたぞ」
そういうと弘樹は思いっきり喜んだ。
「はい,その通りです。このままここでレベルを上げていけばかなり早い段階で進化条件を達成することができるでしょう」
そう,ついに弘樹は新しい効率的な狩場を見つけたのである。それは前,百層下がった時からまた百層ほど下がったところ。ちょうど地獄の迷宮から一階層下がったところだ。鑑定の言っていた通りこの魔窟は百階層ごとに魔物が大幅に強くなっているのかも知れない。
ここら辺では弘樹と同程度の強さを持つ魔物がかなりの数存在するのだ。これだけ聞けば弘樹が負けてしまう危険性があるのかもしれないと思うかもしれないが,実のところその危険性はそんなにない。それにはスキルという概念が大きく関わって来ていた。
それは,そんなに難しい話ではない。単純に魔物ではスキルをうまく使えないから,ということだ。簡単に言い換えれば,スキルを本能のままにしか使用できないということだ。例えば,先ほど弘樹の経験値となった蜘蛛さんの例を見ていこう。
さきほどの戦闘で蜘蛛は鎌による攻撃と糸を吐いてきていた。だが,それだけだ。もちろんそのパワーは弘樹に匹敵するためすさまじい。だが全て大ぶりなうえに振り回しているだけなので避けるのはたやすい(弘樹の場合)。
そして何と言っても蜘蛛の持つ糸の強さというのはそのトラップ性にある,と弘樹は考えている。巣を張り,自分よりも何倍も強い生物を捕らえ捕食する。それが蜘蛛という生物だ。だが魔物はそれができない。そこに圧倒的差が生まれるのだ。
ちなみに魔物の中でもそういったことに気が付く者もいる。それらは一般的に魔人と呼ばれている。長きにわたって人類に敵対する種族だ。彼らは知能を持ち,人間と同じかそれ以上にスキルを使うのがうまい。今は数が少ないため人類は滅んでいないがもし数が増えたら圧倒的脅威になるだろう。
まあ,要するに弘樹はたとえ同じステータスを持っていたとしても,同じスキルを持っていたとしても相手が知能無き魔物であれば絶望的な数の差が無い限り負けないということだ。
「これで,俺の今までの努力が報われたな」
「そうですね。今まで本当に色々な魔物と階層を攻略してきましたもんね」
「それにしてもお前の効果,すごく上がっているな」
「そうですか」
「ああ。今までは近くの魔物しかわからなかったが今ではかなり遠くの魔物までわかるようになってるじゃないか」
「そうですね。私も弘樹の役に立てているのですね。良かった」
「当たり前だよ,相棒。それじゃあ早速レベル上げるわ。サポート頼む」
そして弘樹はまた魔物を探すと倒しに向かった。
◇
「よし。これで十回目のレベルアップだな」
「はいそうです。そのうちこの狩場を見つけてからの成果が四レベルなので絶好調ですね」
もしかしたらこれを読んでいる人には四レベルなんてと思うかもしれない。だが実際にはこの狩場を見つけた昨日からの二日間で四レベル。つまり一日二レベル上がっているのだ。
「レベル上げの場所はここでいいとして,どこかに拠点となる場所を作りたいな。今までずっと移動だったせいで精神的にかなりきてる。落ち着ける場所があればだいぶ楽になるはずだ」
「分かりました。今のところ魔物の発生が少なく,拠点に適している場所は見つかりませんので,見つかり次第報告します」
「わかった」
ただ,今は森ステージだ。森ステージとはその名の通りダンジョン内に森が広がっているステージのことだ。感じとしては熱帯雨林が近い。
休憩場所を探しながら弘樹は思う。前も思ったがダンジョン内はどうなっているのだろうか,と。上を見れば空は青くどこまでも続いていそうだし,草原ステージにいたときは,夜空を見上げたら綺麗な星があった。さすがに地球とは違う星の並びだったが。鑑定によればダンジョンとは魔力が集まってできた物なので一般の常識は当てはまらないということだった。それは今まで魔窟を攻略してきた弘樹が一番知っている。だがそれでも不思議なものは不思議なのだ。
おっと,話が脱線してしまった。で,今は森ステージだから隠れる場所が少ないんだ。実際は少ないわけじゃないが,俺が森にあまりにも慣れていないから見つけられないだけかも知れない。それに森は奇襲攻撃をされやすい。そういう意味でも安全な場所は少ないだろう。
「どこかにいい場所はないかな」
「なかなかありませんね」
そうこうしているうちに日が暮れてきたな。今日も野宿か。そう思った時,急に鑑定が警告してきた。
「マスター。周りを魔物に囲まれています」
「何っ。全く気付かなかった。これが森の恐ろしいところか。それで数は?」
「およそ四.ただし向こうに感知系の魔法を妨害するスキルがあるのか正確には測れません」
「厄介だな」
そういうと俺は戦闘態勢を整える。すぐさま虫が真似を鳴らす音が聞こえてきた。
いつ襲われてもいいようにもう魔法を使っておくか。
「炎神」
俺の体は魔法でおおわれる。これは俺が愛用している魔法だ。身体能力を上げるだけでなく,炎魔法の威力も挙げてくれる。
「いつでも来い」
その瞬間,四方八方から蜂の魔物が現れてきた。
「なんだこいつらは」
「これは,予想外ですね」
「ああ。こいつら,千は居るぞ」
そう,そこにいたのは千を超える数の蜂であった。
その圧倒的な数の暴力を見ながら弘樹は呟く。
(こいつはやべえぞ)
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