蜂との決戦をした件
弘樹が魔法を放ち蜂をまとめて倒す。だが蜂の群れは偽性など気にせず突っ込んでくる。
「くそ,これきりがないぞ」
「ですね。難易度的にはかなりありますね」
「ああ。とにかくこいつらの数がやばい」
弘樹は思う。なるほど,これは鑑定さんでも数がわからなかったわけだ。これだけいれば正確な数など測れるわけがない。今の蜂の数は優に千を超えていた。弘樹がたくさん倒したのにも関わらず,だ。一匹一匹のステータスは大したことないが,この数は厄介だな。だが,ただ数が多い雑魚など俺の敵ではない。そう思った弘樹は大規模魔法を唱える。
「これでどうだ,獄炎」
この魔法は俺の周囲を燃やし尽くす魔法。周りの地面はえぐれそこにいた生物の生存など不可能に思えた。
(これで全滅してくれないかな)
そんな弘樹の願いはあっさりと砕かれることになる。
横から急に大型の魔物の気配を感じる。俺は急いでその場から飛びのく。いそいでもともと俺がいた場所を見ると,横一直線に土がえぐれていた。
「報告します。新たな魔物の気配です。サイズは中型。おそらくタイプは虫。蜂に襲われた瞬間に現れたことを考えると,先ほどの蜂の上位個体の可能性が高いです」
「上位個体か。日本で言うと兵隊バチってとこかな」
「さらに報告です。その数,十」
「十だと。一体ずつの強さにもよるがなかなかきつい戦いになるな」
そして,獄炎が効果を失い,周りが見渡せるようになると,そこにいたのは,弱い蜂を従えた大きな蜂だった。その大きさはゆうに三メートルを超え,手(足)には大きな槍を持っていた。それは文字どうり兵隊バチであった。
「まじかよ。なんで魔物なのに武器を持っているんだ。それに確実に殺したと思った雑魚の蜂もまだまだ残っているじゃねえか」
「マスター,魔物の中には武器を持った物も確認されているため,それほど珍しいことではありません。ただ,もちろん大幅に強くなっていますので注意してください」
「了解した。それじゃあさっそく狩っていきますか。こいつら全員,俺の経験値だぜ」
先手必勝と思った俺はしょっぱなから灼熱の息吹を発動した。俺の口から炎が発射される。それは雑魚バチの群れに直撃した。すると俺の予想どうり直撃した蜂の包囲網の一角に穴が開いた。
(よし。とりあえず俺の攻撃が通じないわけじゃないと。じゃあ,さっき殺した蜂はどうして生き返ったんだ。そもそも今見ているのとさっきのは別個体か?)
そう考えている間も絶えず襲い掛かってくる雑魚バチ,そしてたまに攻撃してくる兵隊バチの対応をしていた。
「灼熱の息吹」
「獄炎」
「獄炎」
「灼熱の息吹」
「獄炎」
だが弘樹の魔法をもってしても蜂は削り切れない。
「ちっ。こいつらきりがねえ。殺しても殺しても減ってる気がしない」
「マスター,報告します。敵個体数減少するばかりか増加しています。中型の個体に関しては最初から5匹ほど増えています」
「なんだと,増加しているのか。それに中型のも増えている?」
弘樹は全力で考える。
(なぜだ。なぜ増加している。まずいな。雑魚はともかく中型のがこれ以上増えたらやられるかもしれん。理由を探らなくては。どんどん新しい個体が生まれている? いやないな。もしくは無限に援護が来るようになっているのか。あるいは,あの蜂は幻覚か)
「おい鑑定,一つ調べてくれ。俺の経験値は増えているか」
「増えています」
(じゃあ,幻覚の類ではないのか。だとしたら⋯⋯)
「じゃあ,あいつらのステータスを鑑定してくれ」
「分かりました。中型の個体は既に鑑定済みです。特におかしな点は見つけられませんでしたが,表示します」
クオータービー
Lv432
HP10000
MP300
攻撃力1000
物理防御力400
魔法防御力400
素早さ1800
スキル 槍術
下位個体統率
高速移動
なるほど,蜂の上位個体だからクオータービーってわけか。分かり易いぜ。
「確かに違和感はないな。問題は小型の方か。小型のも頼む」
「分かりました。鑑定成功しました。表示します」
ビー^
Lv50
HP200
MP5
攻撃力30
物理防御力11
魔法防御力10
素早さ100
スキル 増殖
ステータスは予想通り低い。おそらくこの増殖スキルに秘密があるな。
「鑑定さん,増殖スキルを鑑定できるか」
「可能です。増殖スキル鑑定,成功。鑑定結果表示します」
増殖
所持者が死亡した際,確率で自分と同個体または上位個体を発生させる。レベルは受け継がれる。
(なるほどこのスキルか。これがあったから無限に増えていたわけだな。それにしても厄介なスキルだな。確立がどのくらいかは分からないが上位個体を発生させられるのか)
「マスター,さらに報告します。さきほどから観察していた結果,どこかから援軍が来ていることが判明しました」
「やはり。つまりクオータービーは増殖スキルで,ビーは援軍で増えていたというわけだな」
「判明しましたね」
「ああ。ただ問題は分かったところで対処ができないところなんだよな。とりあえず,クオータービーを先に倒さないとやばそうだから集中攻撃をしよう」
「そうですね。その案が一番妥当かと思います」
作戦は決まったけど実行するのは本当に大変だな。さすが,この階層で生き残っている種族だと思うよ。だけど俺も負けられない。なぜなら生きたいからだ。この魔物を倒して俺はまた一つ強くなる。
「これで八体目」
あれから数々の攻防を繰り広げてきたが,クオータービーは残り七体まで減った。ビーは狙わないようにしているのだが攻撃をすれば当たってしまう。あいつらのHPはあほみたいに少ないから一発俺の魔法が当たれば死んでしまう。幸いあいつらのクオータービーになれる確率はそんなに高くない。1%あればいいほうだ。そしてクオータービーの数には限りがある。殺せばへる。
それに実際一体一体の強さはあまりない。あまりないと言っても油断するといっきにたくさんのビーから攻撃を受け馬鹿にならないダメージを食らうのだが。やはり数は力だな。
「報告します。援軍が来ていた方位から敵性モンスターの巣の場所が割り出せました」
「巣? 巣なんてあったのか」
「はい。援軍が来ていることからどこかに巣がある可能性が高いので調べました」
そうか。それは思いつかなかった。だが言われてみれば当たり前か。ここで生きていく以上どこかに基地を作りたいと思うのは必然だ。だったらそこから逃げるようにして戦えばいつかは援軍もなくなるのか。
「ナイスだ。じゃあ,離れるようにして戦えばいいのか」
「いえ,近づくことをおすすめします。おそらく,このビーは今も生成されています。これを断つにはやつらの巣を叩き,ビーの生成を行っている物を倒すしかありません」
今も生成されているのか。なるほど,これは気づけなかったらあぶなかったな。そうと決まったらこの蜂の猛攻を防ぎながら少しずつ巣に近づいていくとしますか。
「巣の方向はどこだ」
「南西です」
「こっちだな。分かった」
少し進んだところで蜂の数が一気に増えた。
「まさか俺たちの狙いが分かってそれを阻止しようとしているのか」
「そうかも知れません。大変です,弘樹。大型の兵隊バチが新たに十体ほどやってきました」
「分かった。じゃあまずは今いる物を片付けなくちゃな。いったんここは応戦するか。」
(巣の場所が分かったってことはもうビーに気を使う必要はないのか。じゃあ,ここら一体吹き飛ばしてしまおう。幸い俺のMPはまだまだあるしな)
「こいつらを一気に燃やし尽くす。獄炎で足りると思うか」
「すべてを片付けるということであれば火力が足りないかと」
「じゃあどうすればいい」
「炎魔力操作を使って新しい魔法を作ればいいかと」
(なるほど,その手があったか。ん,待てよ。確かその方法って)
「あほみたいにむずいんじゃなかったか。今みたいな状況で行えるのか」
「問題ありません。なぜならマスターが成長しているからです」
「おい。具体的な方法じゃなくて根性論かよ」
「いえ,違います。事実です」
「だが戦闘しながら行うなんて無理だと思うが」
「でしたら,しばらくの間私が戦闘を行いましょうか」
それを聞いた俺は驚く。まさか,妖精スタイルにも隠された戦闘能力があったのか?
「そんなことができるのか」
「はい可能です。弘樹から許可さえいただければ,私が見ていたマスターの動き再現できます」
「つまり,どういうことだ? お前が俺の動きを模倣する?」
「はい。もしかして弘樹は私が妖精で戦うのかと思っていませんか? それは違います。戦うの弘樹の体です」
「つまり,一瞬体が乗っ取られるということか」
「そういうことです。この程度の魔物であれば私でも持ちこたえることは可能かと」
「分かった。しばらくお前に体を預ける」
「イエス,マイ弘樹」
(と言って元気よく体を預けたものの,新しい魔法ってどうやって作ればいいんだ。とりあえず,炎魔力操作を起動するか)
だが弘樹が炎魔力操作を起動しようとしても何も起きない。
(ん,起動できない。そういえば,前鑑定のやつ,炎魔力操作はある一定の魔法を発動するのではなく,炎の魔力を操りやすくするものです。って言ってたな。つまり,これは新しい魔法を作るというより炎の魔力を操作して自分の思い描いた事象を引き起こすって感じか)
そう思うと頭の中でイメージを膨らます。
(それなら,まずは炎の魔力を,今回は全て自分の魔力を使っていいか。そして練り上げる。起こす事象は周囲の爆発による破壊かな)
「体の主導権を元に戻しますか」
「ああ,頼む。なんか行ける気がしてきた」
「分かりました。あとは任せましたよ」
「おお」
(鑑定さんにも任されたしここは男を見せるとき。やるしかない)
「魔力操作で炎の魔力を練り,周囲を爆発。威力は最大で。クオータービーが新しく生まれたところでそいつすら燃やし尽くせる火力で」
「発動,|爆炎陣(フレイム・ゾーン)」
ドゴーーーーーン。
弘樹の放ったまわりの木々をを焼き払った。そして魔法は威力を失うこともなく森をを焼き払う。当然,そこにいた魔物を全て燃やし尽くしクレーターを作った。
◇
「こんなになるんだな」
そう呟きながら,弘樹はもともと森であった荒野に一人,立って(四足で)いた。
「毎度毎度思うんですが,なぜそんなに魔法に火力を込めるんですか」
「いやだってさ,あんなに魔物がいたら焼ききれなかったとき,怖いじゃん。あ,そうだ。ビーの発生源である巣はどうなったの。多分今なら軽く叩けるよ」
「消滅しました」
「え?」
「だから消滅しました」
「消滅って,もしかしてそんなものなかったとかってこと?」
「いえ,先ほどのマスターの魔法で消え去りました。ちょうど左の方に見えるくぼみが巣であったと思います」
「あ,マジすか」
「まじです。ただ,これで今日の,いえこれからの拠点にはいい場所ができましたね」
なぜだろう。鑑定さんから圧を感じる。妖精にもなっていないのにおかしいな。
「あ,この森がなくなった更地か」
「ええ。このダンジョンに残っている森とはかなり距離が離れていますし奇襲は防げるでしょう」
「あ,良かった。まだ森残ってたんだ」
「当たり前です。ダンジョンがどれくらいの広さを誇っていると思っているんですか。それに,よく目を凝らせば遠くに木が見えますよ」
「どれどれ。あ,ほんとだ」
「何はともあれ,拠点が見つかって良かったですね。はっ。もしかしてこれを狙ってあのような大規模魔法を使ったのですか。さすがです」
鑑定さんの目が変わった気がする。
「いや違うから。これから野営の準備するから周り見はっておいて」
「分かりました」
(鑑定があるとこういうときが便利だよね)
そんなこんなしながら弘樹は野営の準備を始めていくのであった。
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