クラスメイトも特訓していた話


 いったい,次の階はどんな様子だろうな。もしかしたら底湖とか溶岩湖とか暴風の中とかかな。考えるだけでもワクワクするな。

「大変いいにくいのですが,おそらく草原だと思います。ダンジョンの特性としてダンジョンの内部は五~十階層は同じですから」

そうなのか。楽しみがなくなったわ。もうパパっと魔物倒しちゃおう。こんなところで時間を食っても仕方ない。


「それでしたら,炎魔法上級の,火の海を使用することをおすすめします」

へー。解析さんがそういうならつかってみよ。でも,火の海か。どんな魔法なんだろうな。字からして範囲攻撃っぽいけど。


 そんなことを思いながら俺は下の階に繋がる道を探す。

「それにしてもこの世界の魔窟ってわからないことが多いよな」

「そうですね。魔窟は世界三大不思議の一つだともいわれています」

「そうなんだ。あとさ,この下の階に繋がる通路ってもっと効率よく見つけることできないかな。いま,いちいち探していると面倒なんだよね」

「無理ですね。地道に探すしかないですね」

「だよな」

弘樹にとって魔物を倒すよりも通路を探す方が面倒になってきていた。それもそのはずだ。魔窟の一階層は一つの町くらいあり,その中から目印もない通路を探さないといけないのだ。ちなみにのぼりの通路と下りの通路は同じ場所にある。


 そんなこんなしながら,やっと弘樹は通路を見つけた。

「やっとあったぞ。さっさと下がってしまおう。そういえばこの階層で出現した魔物ってこの通路を下れないのか」

「はい,下れません。例外もありますがその階層で生まれた魔物はその階層でしか生きていけません」

「そうなのか。かわいそうに」


 さて,さっきから一つ下の階にやってきたぞ。えっと,火の海っていう魔法を使えば楽に攻略できるんだったよな。


「火の海,発動」

―――――――――範囲を選択してください。――――――――― 

範囲? とりあえず最大で

―――――――――MPを1000消費して最大範囲の日の海を発動しますーーーーーーーー


 弘樹が火の海を発動した瞬間,弘樹のいた草原が勢いよく燃え始めた。


「うわっ。燃え始めたぞ。もしかしてこれが火の海の効果なのか。それにしてもこの炎威力が強すぎないかな。これ俺も燃えるぞ」

「大丈夫です。マスターには炎耐性があるため炎によるダメージはかなり少なくなります。それにしても,範囲最大を選ぶとは,さすがですね」

え,最大ってそんなにやばいことなのか。ついふらっと選んじゃったけど,もしかしてまずかったか。

「いえ。世間一般の常識で考えれば異常ですが問題ありません。それに最大範囲とはこのダンジョンの一層を燃やし尽くすということです」

へー,ってやばいな。強い魔法使いすぎた。


「そんなことないです。もっと深い層に潜ったらこのくらいの魔法普通に飛び交っているはずです。たぶん」

まあ,細かいところはいいや。とりま魔物もなくなったし坂見つけて次の階へ行こう。一層ずつは早いから多分すぐ強くなれるでしょ。

「これじゃあ,他の階層も魔物も倒してしまわないか」

「大丈夫です。魔窟では魔法は発動した階層でしか効果を発揮しないということが分かっています」

「そうなのか。ますます原理が分からないことが増えたな」

そんなことを考えながら弘樹は魔窟を攻略していくのだった。





~サイド ベール王国に召喚された学生たち~


 弘樹がダンジョン攻略をしていた時,弘樹のクラスメイトたちは特訓をしていた。

「どうして私たちがこんなことをしなきゃいけないのよ,まったく」

「それは選ばれたからしょうがないだろ」

「だけどさー」

「何話しているんだい。もっとしっかり特訓しろ」


 弘樹がスライムと戦う三日前,この世界には合計三十八名の異世界人が四か所で召喚された。

 一つは西の大帝国,グラン・ラム

 一つは世界最大の王国,エンラルド王国

 一つは中央諸国連合代表 ブラン国

 一つは魔王の統べる魔国 ジルべ魔王国家

そして,何も知らない異世界人たちは各国の思惑どうり行動していくのだった。


 いま愚痴をこぼしているのはエンラルド王国に召喚された,弘樹の親友,太田 連たちがいるグループだ。今は絶賛特訓中。王立騎士団団長 ビルさんにそれぞれにあった武器の使い方などを鍛えられている。いくら異世界人が来たからと言って彼らはもともと平和な国で生きていた人たちだ。だから特訓をしなくては強くなれずにすぐに死んでしまう。そのため特訓はやらんねばならないことだ。


 ただ,その特訓が相当ハードできついので愚痴が出るのもしょうがないのかも知れない。だが,連たちはまだラッキーな方だ。他の場所では厳しいうえに異世界人の力が悪用されようとしているのだ。


 そもそも異世界人が強いと言われるのは,彼らが圧倒的に強い能力と魔力を持っているからだ。なぜなのかはいまだ不明だが。


「おう,お前ら。だいぶステータスと戦闘技術がついてきたようだな。これなら近いうちに実践に移せるぞ」

「実践か。少し怖いな」

「ゴブリンとかと戦うのよね。私は楽しみだわ」

「立夏は元気だな」

「そうだ,お前ら。お前らがもっと強くなったらダンジョン,つまり魔窟に行くのもいいかもしれないな」

「ダンジョン? そんなファンタジーなのがあるんですか」

「おう,あるぞ。まあ最初のうちは浅い層しか行っちゃだめだからな」

「えー」

「えー,じゃない。いいか,お前らの今のステータスはだいたい十くらいだ。だが,ゴブリンでも十五はある。中層迄いったら三桁の化け物もたまに出るからな。絶対に行くなよ」

「はーい」


 だが,彼らは知らない。既に彼らのクラスメイトであった弘樹は三桁どころでは済まないことになっていることを。そして,そう遠くない未来,彼の力を体感することになることなど。

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