進化したら強すぎた件


「なんで」

「ん?」

「なんでいきなりあんな魔法使うんですかー」


 俺は今何をしているかって? それは解析さんに怒られているのさ。

「だって,こんなに威力があるなんて知らなかったし」

すっかり岩がむき出しになった土地を見ながら俺は言う

「だって,普通こんなに威力あるなんて思わないじゃん」

「それでも,です。なぜ私の言うことを聞かないんですか」

なぜ俺がこんなことになったかと言えば,俺の放った魔法が原因である。


 少し前,俺はスライムと戦っていた。そして,その途中で炎魔法中級というスキルを手に入れた。そして,その魔法を勝手に使ってしまったのである。まあ,その結果,


『レベルが5上がりました。進化条件を満たしました』


 という声が聞こえてきたのでまあ,悪くない選択だったなー。と軽く考えていたところで解析さんに

「ちょっとそこ座りな,です」

と言われ(トカゲなので座るというのはよくわからないということは怒られそうなので秘密だ),今に至るというわけだ。


「全く,次から魔法の威力をちゃんと考えてうってくださいよ」

「分かったから。もう,あのファイアブレス使わないから」

「別に使ってもいいんですけどね。ただ,TPOをわきまえてください。あとファイアブレス自体の威力はそんなでもないんですよ」

「そうなんだ。じゃああの時は,炎まといのせいか」

「そうです」

ちなみに今は炎まといは解除している。

「分かればよろしいです」





「それでさ,進化できるようになったんっだって。進化したいなあ」

「そうなんですか。それじゃあさっそくステータスを見ていきましょう」

俺はステータスオープンの魔法を唱える,なんかこいつに話のペースを持っていかれている感じがするけど,まあいいか。

「ステータスオープン」



ミドルリザード

Lv20

HP 115500(500)

MP 1450(50)

攻撃力3700(100)

物理防御力 580(20)

魔法防御力 434(15)

素早さ1450(50)

スキル炎魔法中級Lv2

   炎魔法下級Lv1

   解析鑑定

   スキル管理

進化可能経験値20/20

進化先 ハイリザード

    ファイアリザード


 おうおう。これさっきのスライム超えていないか。今なら倒せる気がする。ていうか,俺のHP減ってないよな。なんでだろう。

「それは全回復しているからです。マスターは忘れているかもしれませんが,スキル超回復をサラッとゲットしていましたよね」

「そういえばそうだったな。もしかしてあれの効果か」

「はい,そうです。ちなみに今は超回復は私の管轄なのでステータスには表示されません」

「ほー。そんなことができるんだ」

それじゃあ,進化する前に他のステータスも見ていこう。


 おお。まずスキルのレベルが上がってる。もしかしてスキル管理があったから上がったのか。

「スキル管理が無くてもスキルは上がります。しかし,スキル管理があるとスキルの成長率が大きく上がります。また,スキルが進化できるようになります。スキルの進化はレベル10で可能です」

「なるほど。スキル管理が重要なわけね。スキルも進化するんだな。この世界は進化でいっぱいだな。で,お次は進化だ。俺のほうのね。普通に考えたらハイリザードだが,どう思う,鑑定さん」


「ファイアリザードをおすすめします。ハイリザードはそこが進化の最終形態ですが,ファイアリザードならばまだ進化可能です」

ほー。そんなことまで知っているのか。

「はい。その種族を鑑定してその種族が進化可能か調べることができます」

「それは便利だな」


 じゃあ,ファイアリザードに進化しますか。

「進化,ファイアリザード」

『進化の意思を確認。これより進化を開始します』

うわー。また体が大きくなっている。やっぱりこの感覚は慣れないな。動物の脱皮とかもこんな感じなのだろうか。そしてずんずん強くなっている気がする。これはステータスが楽しみだな。





『進化が完了しました』


 ふぁ。終わったのか。よくねたな。いや,何で寝ぼけてるんだって? そりゃあ寝てたからですよ。だって,進化中は体動かせないし,意識だけあるんだな。今回だいぶ時間かかったよ。もしかしてこれからはもっと時間がかかるのかもしれないな。

「にしても結構かかったよな」

「一時間と三十三分です」

おお,そうか。しかしあれだな。次からはもっと安全な場所で進化しよう。気を付けなくては。

「あれ? この世界って夜ってないんだっけ。今結構寝たのにまだここは昼だよな」

「はい。それはここが魔窟だからです。魔窟では時の流れ以外すべてのものが思いどうりになります」

「ほー。それでここはいつでも昼なのか」

「はい。それよりもステータスを見てください」

「わかったよ。それじゃあ,さっそくステータスを見ていこう」


「ステータスオープン」



ファイアリザード

Lv1

HP60000(1000)

MP20000(500)

攻撃力15000(300)

物理防御力2000(200)

魔法防御力2000(200)

素早さ3000(100)

スキル炎魔法上級Lv1

   炎魔法中級Lv3

   炎魔法下級Lv2

   解析鑑定

スキル管理

炎系竜流体術Lv1

炎耐性Lv1

炎魔力操作Lv1

進化可能経験値(0/40)



 うん。なんか凄いことなったな。体力六万か。これはおそらくかなり高い数値だよな。いや待てよ,もしここがダンジョンの浅層だったとしたら,あのスライムは雑魚ってことになる。つまりこのステータスも普通よりちょっと高いくらいなのかもな。危ない危ない。思い上がるところだった。

「またマスターが勘違いをしている気がします。まあ,放っておきましょう」

どこまでも勘違いをこじらせる男,弘樹である。

「ん? なんか言ったか。進めるぞ。それに炎魔法上級か。解析発動」


 炎魔法上級

 超級魔法を除くほぼすべての炎魔法が使えるようになる。新しく使えるようになったのは灼熱の息吹,獄炎,火の海,炎魔力操作。


 なる。あれ,炎魔力操作ってそれだけでスキルになってたよね。でも炎魔法上級にも入ってる。どうしてだ。

「それは炎魔力操作は炎魔法上級の経験値と炎魔力操作の経験値,両方受けるからです。炎耐性もそれに該当します」

「ほうほう。つまり炎魔力操作と炎耐性は他のスキルより早く成長するわけか」


 もう一つ疑問があるんだけど,炎魔力操作って何ができるんだ。ラノベとかだとあんま出て粉にスキルな気がするぞ。


 炎魔力操作

 炎属性の魔力を操作することができる。


 それって炎魔法の威力が上がるってことか。分からない。

「マスター,炎魔力操作について分からないって顔をしていますね。炎魔力操作は炎魔法の操作をできるようになるスキルです。炎魔法の発動時間が短くなり,炎魔法に限り自分の思い描いた魔法を発動することができます」


 おお,それってすごいじゃないか。炎魔力操作か。魔力を直接操作できるってことは,

「つまり,俺は魔法開発できるってことか」

「そういうことです」


 じゃあさっそく,何か開発してみよう。ただどんなものがいいかな。あ,攻撃力を挙げる魔法はどうかな。

「理論が不十分なため実現不可能です」

理論?

「はい。どうして攻撃力が上がるのか,その理由です」

なるほど。そういうことか。意外と難しいな。だったら,灼熱の嵐を起こす魔法を作ろう。

「それには風魔力操作が必要なため不可能です」

あー,何も作れねえ。今の俺には無理だ。諦めよう。そうだ,解析さんや,なんか強い魔法作っといてよ。

「分かりました。マスターも驚くほどの魔法を作って見せます」

お,解析がやる気になったぞ。てか,ほんとに解析かなー。俺にはそれ以外の能力が入ってるように思えるんだけど。ま,細かいことはいいか。



 さてと。能力が上がったとはいえ俺のやることは変わらないな。レベル上げ,だ。

「おそらくですが,マスターの今の能力であればそこら辺の雑魚を倒してもレベルは上がらないかと」

そうなのか。でもここのエリアボスでは上がったよな。じゃあまた魔素を開放してエリアボスを呼び出せばレベルは上がるんじゃないか。

「いいえ。無理です。一つ言いますが,進化する前と進化した後では経験値のたまり方や強さが大きく違います。いまあのスライムを倒したとしてもレベルは一上がればいいほうでしょう」

そんなになのか。じゃあどうすればいいんだ。

「階層を下がるのが一番いいかと思います。少なくとも百階層下がればレベルはすいすい上がるでしょう」

百層? それって相当じゃないか。そんなに下がって生きていけるか。

「生きていけます。むしろ最下層まで下がってしまってもいいと思います」

「全く,解析はそんなお世辞をどこで覚えたんだろう」

「お世辞じゃないのに,です」


 そうか。まあ,とりあえず階層を下がっていこう。

「そうだ,階層を早く下がる方法って何かない?」

「階層を早く下がる方法ですか。ないですね。ダンジョンの転移トラップにかからない限りはないと断言できます」


 そうかー。じゃあ,地道に下がっていくしかないのか。まあ,とりあえず下がっていこう。とりまこの階を下がろう。そうだな,ざっと百階くらい下がってみるか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る