6話.算数の授業

算数の授業をする教室で準備をする。チャイムが鳴り響き、児童たちは席に大人


しく座っている。


「それでは授業を始めます。」


起立、礼と言って席に着くと私はチョークを持って黒板に今日プリントを使って


行う単元を書き記す。


「今日で1年生の時に習うレベルの足し算を完璧に出来るようになりましょう。

 1桁+1桁と2桁+1桁をします。」


まず1桁+1桁の足し算問題が20問載ったプリントを配る。40人もいるから


配るのが大変だった。


「今から3分与えます。はじめ。」


一斉に解きだす児童たち。1桁+1桁の20問を3分で全問正解出来ない人間は


峰万理ヶ丘学園の試験に受からない。レベルを計るだけの問題だけれど、クラス


内の順位が分かる。


「3分経ちました。後ろから回収して私の所に持ってきてください。」


さっさと集めてくれる児童たち。40人分のプリントが2分足らずで集まった。


「採点して次の時間に返します。」


授業で使うプリントを3枚配布して本格的に授業を始める。繰り上がりの計算を


解説する。少し解説しただけで分かってくれる。皆の問題を解く様子を見て周っ


ていくと全員理解しているようだった。


「次のプリントに移ります。2桁+1桁の計算です。」


皆が次々と解いていく。プリント3枚とも終了、回収した頃に授業は終了する。


私は終了の挨拶を終えると次の時間が算数のクラスへ向かう。能力科のクラスが


次の算数の授業をするクラスだ。


「皆、真面目に社会の授業受けた?」


能力科クラスに戻って皆に聞く。


「したよ~」


皆笑顔で答えてくれて嬉しい。私は教卓で準備を進める。プリントは4種あるが


枚数は一般科クラスの半分で済む。


「先生、算数って何するの?方程式とかしたいな。」


綿貫 楓さん、方程式はあと5年後ぐらいに出来るよ。今は簡単な足し算だけだ


ね。私は児童に席に着くよう促す。チャイムが鳴る。


「起立、礼。授業を始めます。」


私が一枚目のプリントを配ろうとプリントを持つと悪戯な風がまた私の手助けを


してくれる。ドヤ顔に近い顔で微笑んでいる儚人君。


「また助けられちゃったね。ありがとう。では3分与えます。はじめ」


開始して数十秒ほどすると楓さんがプリントを私に持ってくる。


「終わった。」


私はプリントを受け取る。ざっと確認してみると全て正解だった。受け取った


プリントを教卓の上に置き、3分経つのを待つ。タイマーが鳴って私が後ろから


集めるよう指示をすると直ぐに集めてくれた。残ったプリントを配ろうとした時


私に味方する風が訪れる。


「毎度ありがとうね。今度から配布物あるときは頼もうかな?」


私が微笑んで儚人君に尋ねると元気よく返事を返してくれる。初等部1年生の子


が静かに勉強に没頭する光景より全然いい。


「先生いいよ。」


私は3枚のプリントの問題を解くよう児童達に言う。問題を解き始めてくれ、私は


内心喜ぶ。


「先生終わっちった。」


また楓さんか。相変わらず早いね、特進科の児童とかより早いかもよ。3枚で大体


50問はある。1分足らずで終わらせてしまうとは、想定外だ。私は授業が終わる


時間から逆算して、決めた時間にプリントを回収する。回収して1分ほど経った頃


チャイムが鳴る。一般科の授業と能力科の授業、内容は変わらないのに全然違う事


した気分。


「起立、礼。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る