5話.今日から授業

今日から授業が開始する。峰万理ヶ丘学園では初等部でも教科担任制が採用され


ており、私は算数の担当。担任は教室で児童を待つことになっている。


「先生おはようございます。」


能力科で1番乗りだったのは縫島 叶さん。元気ではきはきした女の子だ。クラ


スを明るく盛り上げてくれそうな存在。


「叶さんおはよう。」


叶さんが教室に入ってから数十分して一気に児童が教室に流れ込んでくる。


「先生おはよ!ほら言葉も挨拶しろって。」


瀬谷 令君が明るく挨拶をしてくれる。明るい子が居ると他の人の心も明るくなっ


ていく。良い事だ。


「続く薄い硝子の舞台から届かぬ陽光に接吻を交わす時。」


何言ってるのだろうか。6歳児の語彙力じゃないでしょ。会話が噛み合わなさそう


だから対策を考えておこう。


「おはようって言ってるよ。言葉は詩じゃないと上手く話せないからさ。」


なるほどね。翻訳できるのは令君だけなのか。だから言葉さんは令君に引っ付いて


いるんだね。今いるのは15人。あと10分の間に5人ちゃんと来るかな。杞憂だ


った、扉が開いて4人ほど登校してきた。私は挨拶を交わすと、来ていない最後の


1人が誰なのか名簿で見てみる。森飼 国馬君だ。


「そろそろチャイム鳴るよ」


私が教卓から言うと児童たちは席についてくれる。国馬君は未だに来ない。休みの


連絡も入って無いし遅刻かな。


「すんません遅れました。」


国馬君が教室に入った瞬間にチャイムが鳴る。


「よかったねセーフだよ。」


国馬君は安心したような顔で席に着く。私は皆にもう一度挨拶をしてSTを始める。


昨日教頭先生から通達されたお知らせについて皆に知らせる。


「この学園では毎年漢字・数学・英語の外部検定をしています。今年は漢字・数学


 の試験は4級以上という決まりになりました。」


恐らく誰も受けないだろう。私が受けるかもしれないと思っていた子達ですら興味


なさげな顔をしてそっぽ向いてる。私は応募のプリントを配る。


「2週間後に受けたい人は提出してください。」


誰も興味を示さずにプリントを受け取る。私はノートを各教科で必要なため来週


までに5冊分用意しておいてほしい事を伝えてSTを終了した。1限目に算数が


入っているのは一般科の4組。早く準備をして向かわなければいけない。


「次の授業は社会だからね。」


峰万理ヶ丘学園では社会・理科の授業を1年生から始め家庭科の授業を3年生から


始める。進んでいるのは結構だが、強いられる負担が大きいのが難点だ。初等部の


5年生の時には中学の範囲を始めるんだから進学校どころじゃないよね。職員室に


戻って教材取りに行かなきゃ。

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