4話.能力科差別

内気な子のサポートをしつつ、皆と自己紹介し合った後、配布物を配る。20人


に配るのは時間が掛かるため大変だと思ったけど、悪戯な風が配布物を全員に届


けてくれた。儚人君の仕業ね。


「儚人君ありがとう。助かったよ。」


配る予定だった配布物を全て配ってくれた風に感謝して軽く説明をする。明日か


ら授業が始まる。教科書を全て配布する、保護者への通信も配布する。初日は、


配布物が非常に多い。


「教科書は名前を書いてきてね。時間割表を配ったから、明日から時間割に従っ


 て教科書を持ってきて。プリントは保護者の人に渡してね。」


私は全て言い終えると帰りの挨拶をする。


「起立、礼。さようなら。」


児童は荷物を持って教室から去っていく。私は職員室に戻り仕事を進める事にし


た。職員室までは普通に遠い。まず能力科教室から近い場所なんてほとんど存在


しない。職員室に着くと他のクラスはまだ終わっていないからか人は少ない。


「白山さんのクラスはもう終わったのかね?気楽でいいな。」


校長先生が皮肉を込めた発言をする。能力科差別の風潮は未だに残っているのか


能力科の担任である私も他の科を受け持つ教師から嫌味を言われる事も多い。何


故かは分からないけど根付いているんだね。私は仕事を進める。明日からの授業


で使うプリントの制作などだ。私は算数担当だから算数のプリントを毎日制作す


る。1回の授業で使う数は4枚。つまり毎日4つ作るのだ。算数のプリントだけ


で1日1600枚。印刷機が過労死する。


「あら能力科はもう終わってたんだね。私たちは忙しいわ。」


扉を開けて私を見た瞬間に嘲る特進科の教師。特進科の教師2人は特に意地悪な


人間だ。優秀なクラスを受け持っていることを誇りにでも思っているのだろうか


一般科の担任にさえもマウンティングする始末。こんなのが教師だとは国の将来


が思いやられる。その後職員室に戻ってきた一般科の教師も私に嫌味を言う。先


が非常に思いやられる。


「はいはい、ちょっとお知らせ。」


教頭先生が声を上げる。お知らせって何だろうか。


「今年学校内で行う3科目の検定についてです。」


漢字・数学・英語の外部検定か。私も在学時に受けた覚えがある。


「検定についてですが漢字・数学は4級以上のみと定めます。」


中学生レベル以上しか受けるなって言いたいのか。受けるのは特進科の児童の極少


数だけになるでしょうね。一般科でもいるかもしれない。能力科は未知数だから見


当つかない。


「これだけです。業務に戻って下さい。」


能力科で受ける可能性のある児童は何人か予想がつく。5年生は殆ど受けるだろう


けどね。1年生で受ける人はほんの一握りでしょ。私はひたすら算数のプリントを


作成する。争いは嫌いだけれど、一般科や特進科の児童に負けてほしくないな。

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