3話.おはようございます

退場は滞りなく終わり、教室に向かっていく。大人しく着いてきてくれる児童達


に安心していると急に周りが霧に包まれて視界が悪くなる。児童の能力によるも


のであることは誰の目から見ても明らかだった。霧を操る能力者は


「朧 雲良さん、無闇に能力は使用しないでね。」


言えば素直に聞いてくれる子だったみたいで、雲良さんは霧を失くしてくれた。


霧が蔓延する中を歩いていくのは危険すぎる。能力科の教室は一番奥。とても遠


くて階段から教室まで4分以上掛かる。教室の設備は整えられているため文句は


言え無いけどやっぱ遠い。私は廊下の一番端まで歩いていき、ポケットに入れて


いた能力科教室の鍵を取り出す。扉を開けると教室に入る前に児童に説明する。


「皆自分の出席番号は覚えてるよね。最前列右端が1番で、一列5人だから。」


私の説明を聞いてくれていた事実が目に見えて現れる。教室に入った途端、席数


を数えて、皆それぞれ席に座ってくれる。偉い子達だ。私は最後に教室へと入り


教卓と黒板の間に立って皆に改めて挨拶をする。


「おはようございます。私は能力科担任の白山 花奈晃です。」


私が話す間、騒いだりせずに静かに話を聞いてくれる児童。とてもじゃないけど


6歳の子供とは思えない。私は時間割について説明をする。


「8時30分までに教室に入って下さい。峰万理ヶ丘学園では1年生から6時間


 授業をする事になっています。」


不服を唱えるかのように教室内に風が吹き乱れる。また能力者の児童が悪さをし


ているのか。確か風を操る能力者は


「儚人君、不服は口で言ってね。」


風は止んで私は説明を続ける。峰万理ヶ丘学園には独自の決まりが多数ある。全


てを説明するのは難しいけれど、初等部1年生から関わってくることは説明して


おかないと先々困る。


「勉強は一般科と並行して行います。中等部進学時にクラス分けのテストがあり


 能力科も受ける事になっているので勉学にも力を入れていきます。」


能力科が設置されている学校で一般科と能力科が勉学を並行して進める学校は、


峰万理ヶ丘学園以外は今のところ無い。どの学校も並行しての教育は難しいと考


える様で、並行案が出ても取り入れられることは無い。


「能力科には必修科目が1つ多いです。その分他の必修科目が毎週2時間は削れ


 ると思っていてください。」


テスト後の順位発表も能力科・特進科・一般科の結果を全て1つの順位にまとめ


る。能力科はテストに関わる必修科目の授業を受ける時間が、他の科より少ない


ため苦戦を強いられる可能性が高いはずだが、能力科の生徒は上位に食い込む事


が非常に多い。勉学は今から危惧する箇所じゃない。


「朝はSTをします。授業は初等部でも1限50分です。英語は初等部2年から、


 必修科目となります。」


今教えておくべき決まりはこの程度かな。後は自由にさせれば良いんだよね。


「これで説明は終わり。今からクラスの皆が仲良くなれる様に、教室の中で自由


 にしてていいよ。教室の外には出ちゃダメ。騒ぎすぎてもダメだよ。」


言っておけば分かってくれる子達だ。私が児童達に説明をすると、


「はーい!」


と元気に返事してくれる。一般科や特進科は受験の結果によって割り振られてお


り、初等部1年からスパルタ教育と言うべき程、勉学に力を入れる。きっと能力


科だけだと思う。伸び伸びと出来る期間が少しでもあるのは。


「よろしくね。」


生徒たちは同じクラスになった子と仲良くなろうと頑張っているみたい。内気な


子とかは私がサポートしてあげるべきかな。皆が仲良くは無理かもしれないけど


クラスが嫌だと思う人がいない様なクラスにしたい。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る