第181話 ウルタール王国からの使者。1

 領地の開発も進み、もう少しで中心街と魔法学院の建物が完成し揃うぐらいになった頃、ついにウルタール王国から十全のフルボッキ領に使者が来ることになった。

 それを迎えに行くため十全は暁を伴い首都の大和へと来ていた。


「それで兄さん、実家には寄っていくの。」

「寄る訳ないだろう。」

「またまた。」

「手紙のひとつも寄こさないのに帰るわけないだろう。」

「どっちも意地はっちゃてる訳か。」

「意地じゃないよ。ただの道理の話だ。」

「はいはい。」

「それより、直接内裏に向かうんだ。襟を正せ。」

「うっす。てか私、パーティー以外だと内裏に入るのは初めてかも。」

「だとしたら驚くぞ。内裏の奥の禁裏に向かうんだからな。」

「マジで付いて行ってもいいの。」

「いいのいいの。禁裏に入ればもっと気楽に行けるぞ。」

「何でそんな気楽なの。」

「禁裏だと陛下は素でいるからな。堅苦しいのはパスらしい。」

「なるほど。」

 そうこう話しながら内裏の大手門までやって来た。

「止まれ、何者である。」

「我、怪しいものにあらず。フルボッキ領領主の松永・フルボッキ・十全とそのお付き、東雲 暁である。紅玉帝陛下にお目通りの仕儀有りてここを通してもらいたい。」

「まことか。ならば合言葉を言え。」

「分かりました。では、す~~「こ~~~うちゃ~~~~~ん、遊びましょ~~~~~~~~~~~。」


 ずこーーーーーーーーー!

 

 十全がそう叫ぶと十全以外のもみんながズッコケた。

「ちょっと兄さん何やってんですか。」

「何って合言葉。」

「そんな合言葉がありますか。ほら門番のかたもあきれていますよ。」

「まったくだ。冗談もほどほどにしていただきたい。お前ら、こいつらを牢に連れていけ。そこで反省して来い。」

「ほら~~~~~。」

 十全たちは奥から出て来た兵士たちに連れられて内裏の牢の中へと放り込まれた。

 放り込まれた牢屋は地下にある意外にも広々として、また清潔感のある牢だった。


「う~~~~~、兄さんのバカバカバカ。こんなことが父さんにバレたらどれだけ怒られるか。」

 兵士が去った後、暁は十全に文句をぶつけるが十全はどこ吹く風。

 鼻歌を謡いながら牢の壁をこんこんと叩く。

「兄さん、牢破りとかやめてよ。これ以上罪を重ねないで。」

「大丈夫大丈夫、ほいポチポチポチっと。」

「何してるの兄さん?」

 暁が十全の行動をいぶかしんでいると。

 ヴオン。

 と、音を立てて、牢屋の床に魔法陣のような光の模様が浮かび上がった。

「ほれ、暁こっちだ。」

「え?え?」

 暁が混乱しながらも十全に肩を抱かれて模様の内側に入った。

 そして十全がパンパンと柏手を打つと、

 ヴイイイイイイイイイイイイイイイイイン。

 という音と共に2人の姿が牢屋から消えたのであった。

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