第182話 ウルタール王国からの使者。2
フュォン。
体が浮くような感覚と共に十全と暁の視界は光に包まれた。
そして数秒後、光のカーテンが開いたら。
「ここ、何処ですか。」
見覚えのない場所に立っていたものだから暁から困惑の声が出る。
その部屋は小ぎれいながらも牢屋だったさっきの場所とは違い、鮮やかな塗装がされた神々しさのある部屋だった。
部屋の壁などは真っ白で、柱や梁は朱色に染められている。
例えるなら神社の境内の中だろうか。
「あっ、春日大社ですか。」
「残念、似てるけど違うよ。ここは禁裏だ。」
そう十全が説明する。
「さっきまで牢屋でしたよね?ワープですか。」
「それに近いものらしいけど、場所は限られてるから例えるなら、SFに出てくる宇宙船の転送装置みたいなものかな。」
「え?内裏とかにはそんな技術が。」
「マジここだけ世界観が違うからな。とはいえ、汎用性も量産性もないここだけのモノ、らしいがな。」
「へー。」
とか何のか言っていたら迎えの女官がやって来て、2人を案内し始めた。
「兄さん、それにしてもなんで牢屋から入ったの。」
「あそこが一番手続きが楽な道なんだが、普通牢屋に入り口があるとは思わんだろ。しかも大手門でわざわざ兵に連行されて入るとか。」
「確かに。」
「あと、兵が去ってからコッソリパスワードを入れて道を作る。そうすれば情報の漏洩も防げる。」
「なるほど。兄さんがふざけていたわけでは無いのね。」
「一番ふざけているのは陛下だけどね。」
「ちょっと兄さん。失言ですよ。」
「いやそんなこともない。」
「何を言って――――ひゃぁん!」
突如悲鳴を上げる暁。
「何いま何かにお尻触られ――――ってきゃああああ!」
おしりを触られて驚いていた暁だがその後に両脇から出てきた手によって胸を鷲づかみにされた。
「何ですかコレ、何かの妖怪ですか。」
「禁裏に妖怪は出ないよ。化かしてくるのはいつも陛下だ。」
「え、ってことはこの手はまさか――――。」
「おっす、フルボッキ久しぶり~~~。」
「こうして直接会うのは久しぶりですね陛下。」
暁の肩越しにひょこっと顔を出す紅玉帝。その手はむんずと暁の胸を掴み揉みしだいていた。
「ひゃん、んぅん、やめっ―――――。」
「どうですかウチの義妹で嫁の暁です。」
「うむ、良いぞ良いぞ。尻はマシュマロの様で、胸は熟れたいチゴのごとし。大福に入っとらんのがちょっと残念じゃがの。」
「ちょっと待ってください。まさかこのセクハラ妖怪が紅玉帝陛下なんですか。てか兄さんも見てないで助けてください。」
「うむ、助けるどころか兄ちゃん混ざりたくなってきちゃった。」
「おま、ふざっ――――」
ゴッ!
「おわ、あっぶね。お前金的はねぇだろ、金的は。」
「容赦なくいったのぉ~。それじゃあわしの一人占めに―――」
「くっ。」
ヒュッン。
「およ?」
と、途端に紅玉帝の手の中から暁が消える。
「ぐえっ。」
そして、十全の口からカエルのような声が出た。
十全の背後にいる暁が首を絞めているのだ。
「ぶえ、え。
「なるほど、それが妹ごの転生で手に入れたスキルかや。」
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