第167話 騎士団再編成。2
「その、私。騎士団長に任命されちゃいました。」
雫からの相談とはその騎士団についてだった。
「それはおめでとうございます。出世じゃないですか。故郷のお父さんも泣いて喜びますよ。」
「あの父が泣くところとか想像できませんよ。」
「いえいえ、ああいう堅気な方こそ娘のけっこ――――あっ、雫さんたちの披露宴してない。」
「えっ?今そこに話もっていきます。」
「こうしちゃおれない。」
「わ~~~、ストッッップ。この時期にするのはやめてください。せめてもう少し落ち着いてから。」
思い立ったが吉日、と、飛び出して行こうとしたウルトゥムを雫は何とか元の場所に座らせた。
「とりあえず、まずはワタシの相談に乗ってください。」
「分かりました。ですが、仕事が落ち着いたら披露宴やりますからね。」
「はい。」
ウルトゥムの断固として譲らない、という決意を感じて頷くしかない雫だった。
「それで、騎士団長に任命されたそうですが何を困っているのですか。」
「全部ですよ。そもそもこんな若さで騎士団長とか、人の上に立つことになるのが信じられません。」
「ワタシ達の旦那様はそれを領主との兼任でやっていますけどね。」
「ミツル君のそういうところすごいですよね。」
「貴方のその表情がころころ変わるところ、面白いですね。」
「で、人の上に立つ重圧に耐えられないと?」
「そえもありますよ。でもそれ以上に騎士団長って何するんですか。」
「そこからですか。」
「これも若さゆえです。」
「まず、今までの騎士団は何をしていたんですか。」
「今までは街中や街の外周の警邏、けんかの仲裁、危険な動物の討伐ですね。」
「それで、貴方が騎士団長になって、何が変わるのですか。」
「いえ、何も言われてはいません。」
「ならば、これまでとやることは変わらないはずです。」
「そうですか。」
「そうですよ。今までだってミツルの代理として指揮を執ってきたのでしょう。ならば問題なくこなせるはずです。ほら、自信をもって。」
「そうですよね。何か大きく変わる訳でもないんですから今まで通りでいいんですよね。」
「そうです。」
「ありがとうございます。ウルトゥムさんに相談したおかげで肩の荷が下りたようです。」
「そうですか。それは良かった。それじゃあ、これからは普通にお茶でもしましょう。ミツルが新しく仕入れたマンガの話とかしながらお菓子食べましょう。」
「いいですね。お菓子って、近藤さんが作った奴ですか。この前手に入れた世界の卵で、甘味の材料がいっぱい手に入るからってすっごく張り切っていましたよね。」
「ハイ、近藤さんのお菓子です。クレアお茶の準備を。」
「かしこまりました。奥様。」
と、3人がお茶の準備をしていると。
こんこん。
「はい、どなたですか。」
「十全だ。ここに雫来てないか。」
クレアと呼ばれたウルトゥムのメイドが迎えると、十全が紙の束をもってあらわれた。
「いたいた、なあ、騎士団に任せる仕事の説明したいんだけど今大丈夫か?」
「………………。」
「…………ウルトゥムさん、一緒に聞いて、相談に乗ってください。」
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