第159話 ヤーガの大和のここがいい。5
「ダーリンをダーリンって呼ぶ理由。」
「そうです。ヤっちゃんは会ってすぐに兄さんのことをダーリンて呼び始めましたよね。なんでですか。」
首を傾げるヤーガに、暁は身を乗り出して訊ねる。
「ソレはもちろんダーリンをダーリンにしたいからですよ。」
答えになっているようで答えになっていない答えをヤーガは口にする。
そして、暁はそれに納得はしなかった。
「そのダーリンにしたかった理由が知りたいんです。」
「それはダーリンが魅力的だったからですよ。」
「どこがよ。」
「あっつん、かりにも側室なのにその言い分は。」
「そりゃぁ今でこそ金と権力があるけど元は落ちこぼれのオタクなのよ。」
「ヤーガは過去を知りませんから今の魅力にひかれたのです。」
「うう~。」
「なるほど、あっつんのソレはこれ以上ライバルが増えてほしくないという嫉妬か。」
「そ、そんなんじゃないわよ。」
否定こそするが暁の言葉はしりすぼみとなって、それが事実だといっているようなものだった。
「それで、ヤっちゃんは奴さんのどこが魅力的だったんだい。」
暁に代わってツィマットが訊ねる。
「それはですね。まずヤーガの実家はそこそこ歴史のある貴族なんです。」
「なるほど、それで。」
「ヤーガは他国の文化などに興味を持ちやすい性格で、小さい時からダーリンは異国の人がいいと思っていました。」
「それは親御さんは苦労しただろう。」
「そうですね、ヤーガは社交界なんかも他国の人や話にばかり興味を持っていました。クームは逆にボリアの社交界ではうまくやっていた方ですけど。」
「なるほどねぇ。」
「それでお見合いやらが面倒だったのでヤーガは魔法学院に進むことにしたんです。」
「あぁ、分かるなその気持ち。」
ツィマットがヤーガの話にうんうんと頷く。
「それって、クームさんも付いてきたのですか。」
「クームとはいつも一緒でした。意見が割れた時は勝負をして勝った方の意見を優先しました。」
「ははは、それじゃあ結構文句言われたんじゃないですか。」
「大丈夫です。クームはとってもいさぎがいいのでいつも文句を言わず付いて来てくれます。」
「へー、」
「それでヤーガの話ですけど、ヤーガは待望の異国とのコミュニケーションの機会を皇帝陛下にいただけました。」
「皇帝陛下ってボリアのだよね。ヤっちゃん達って皇帝の指名で使者になったの。」
「ハイそうです。ですので両親も文句を言えませんでした。そしてヤーガは大和に来ました。」
「そこでウチの領主様に一目ぼれしたのかい。」
「一目ぼれではありませんでした。ですがなんだか波長が合うというか、一緒に居て面白い人だったのは確かです。それからダーリンのことを知っていくとヤーガの理想の条件を満たしていたのです。」
「他国の人間。しかも出世頭の貴族様だしね。」
「ソレもありますが、ここが多文化との交流を前提に作られた街だというのもヤーガ的ポイントです。あとウルトゥム様とも気が合いましてすでにOK貰ってます。」
「遅かったか。」
ヤーガの言葉に肩を落とす暁。
「とりあえず、体は洗ったし風呂に入るか。」
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