第157話 ヤーガの大和のここがいい。3

「あれ、お2人ともお風呂入らないんですか。」

 湯船の中からヤーガがツィマットと暁の2人に問いかける。

 2人は浴場へ入ってまず洗い場に向かったのだ。

「風呂に入る時はまず体を洗ってからですからね。」

「特にウチは機械油とかで汚れているからなぁ。」

「私も訓練で汗かいちゃいました。」

 その話を聞いてヤーガはあわあわと慌てた。

「す、すすすす、すみません。ヤーガ体を洗わずにはいっちゃいました。」

 ザバーァァァァァァ。

 急いで湯船から上がるヤーガのココアのような色をした褐色の肌をお湯が流れ落ちていく。

 お湯が流れた後の肌はつやつやで洗う必要が無いように見える。

 しかし、決まりは決まりだろうと2人に習おうと洗い場へと向かう。

「ヤーガさんは大和に来たばかりなんですからそこまで気にしなくてもいいですよ。お肌も綺麗で汚れてないし。」

「ありがとうございます。でも、習慣というものは最初が肝心だと思いますので、ぜひご教授ください。」

「そんなかしこまらなくても、子どもなんかはそのまま行っちまうぜ。」

「ヤーガは子供じゃありません。ちゃんと大人らしくお風呂を楽しみたいです。」

「風呂が気に入ったのかい。」

「はい、すごく気持ちがいいです。」

「そうかいそうかい、大和の文化が気に入られるのは嬉しいね。」

 カッカッカッ、と快活に笑うツィマットに誘われて彼女の隣の黄色い椅子に腰かけるヤーガ。

 隣を見れば、ヤーガ、ツィマット、暁と並んでいるが見事に大中小だった。

 「勝った。」と心の中でガッツポーズをとるヤーガだった。

「それでは大和のお風呂の入り方を教えてください。」

「おお、元気がいいなぁ。」

「何でしょう。今なんか視線を感じたような?」

 暁はその視線の元がヤーガだとは気づかずに、首を傾げていた。

「それでヤーガだよな。」

「ハイ。」

「ヤっちゃんってよんでもいいか。」

「ヤっちゃん?」

「あだ名ってやつだよ。仲がいいやつ同士で付け合う愛称ってやつだ。」

「なるほど、いいですよヤっちゃんで。ちなみに暁さんのことは何と呼んでるんですか。」

「あっつん。」

「ではヤーガもあっつんと呼ばせてもらいます。いいですか?」

「うん……いいわよ。」

 若干照れ気味の暁に表情は変わらないが楽しそうなヤーガの声が答える。

「ありがとう。それであっつんはツィマットさんのことはなんて読んでるんですか。」

「ん、……そういえばいつも所長って呼んでますね。」

「ショチョウ?ダメなのですか。」

「ウチは他にもトッコー技研の所長もやってて、皆には役職の所長って呼ばれてるからな。それがあだ名みたいなもんだよ。」

「それなんだかもったいないです。そうだ、せっかくだしヤーガが可愛いあだ名を付けます。」

「いやいいよ。」

「いや付けます。そうですね――――キティでどうでしょう。」

「ちょっとなんでそんなあだ名になるんだよ。」

「いいじゃないですか可愛くて。けってーい。」

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