第155話 ヤーガの、大和のここがいい。1
ヤーガ・オニックス。
彼女が語る大和のいいとこ。
それは――――
それは数日前のことだった。
その日は会議はなく、街の基礎工事の現場の視察に同行したのだ。
「結構一気にやってしまうんですね。」
「ああ、地下に埋設するものは先に作っておいた方が便利だからな。」
「それなら地下通路を作ったらいいんじゃないの。」
「そうできればいいが、日本列島は地震の多い土地だからあまり蜘蛛の巣のようにはできないんだ。」
「地震が多い?そんなところに住んでいるの。」
「2千年以上な。」
「ここってそれだけのメリットがある場所なの。」
「そうだな、上げれば色々あるが地殻の運動が集中する場所故に火山活動が活発だ。だからさっき言ったように地震も多い。加えて大気のぶつかり合う場所だから気候の変化が多く、周りの海も海流がぶつかり合うことで台風も多い。」
「めちゃくちゃ過酷な環境じゃないの。」
「でもそのおかげで水が豊富で土壌も肥えている。農耕には適した土地だった。」
「気候が変わりやすいのは農耕には向かないんじゃないの。」
「それでもこの土地には数多くの動植物が生きている。農作物も一緒さ。季節ごとに育つものが違う。多種多様な作物が育てられるんだ。」
「なるほど、気候の変化を観測して法則を読めればメリットの方が多いんだ。」
「海の方も海流がぶつかり合うから魚の種類も多いし漁獲量も多い。そんな食材が豊富な土地だったから食文化も発達した。」
「面白いですね。その気候や地理のデータは残ってるんですか。」
「残ってはいるけど異世界転移でかなり環境も変わっているぞ。」
「ですが大和の人達はそのデータをもとに今の環境に適応することができたのですよね。それはヤーガから見たら素晴らしいことです。」
「そうかい。こっちは生き残るのに必死だったからな。」
「魔法の研究でも環境の変化の研究は重要なんですよ。でも、ボリアではまだまだこの考え方が遅れています。これまでの戦争でも遠征先の環境に対応できずに大きな被害を出したことが何度もありました。」
「地球でもナポレオンのロシア遠征とかそんな感じだったかな。」
「なるほど、大和の文化はボリアの文化より経験が豊富だからこそ発達しているのですね。」
「おめがねにかなったかな。」
「がぜん、研究者の魂に火が付きました。よろしければ自然の観測などにまつわる文化の伝承とかありませんか。」
「あるぞ、風水とか陰陽道とか。」
「ぜひ教えてもらえませんか。」
「う~ん。これは流石に俺の一存では答えられないな。一度、陛下にお伺いしないと。」
「ぜひよろしくお願いします。」
「わかった、頼んでみるよ。」
「おお~。良いのじゃ。大和の文化に興味あるなら大歓迎じゃ。資料は宮廷に保管されとるし、今度連れてまいれ。」
と、あっさり許可が下りたりしたのだった。
「そうゆう訳で、ヤーガは風水を学んでボリアの魔法と合わせて街づくりに貢献したいと思います。」
そう言うヤーガの顔は少し興奮気味だった。
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