第123話 ボリアの使者。2

「それでじゃが、おぬしにはもう少し悪い話がある。」

 十全に対して紅玉帝が申し訳なさそうに切り出す。

「陛下がそんなにかしこまるってことは結構めんどくさいことなですか。」

 十全としてもそう返したくなるような顔だった。

「うむ、そうじゃの。端的に言うとおぬしに丸投げになる、と言っておこうか。」

「具体的に何なんですか。」

「ボリアからの使者が来ることになった。」

「……それをこっちに丸投げですか。」

「すまんがそう言うことになる。もともとおぬしから要請のあった魔法使いについて、国交を築くための交換条件に入れて交渉していたのだがな、意外と向こうが乗り気で話が進みそうなのじゃ。」

「それで何でうちに丸投げなんですか。」

「向こうは国交の為の親善大使を派遣するのに先駆けて、戦争での非礼を詫びて魔法使いを派遣すると言ってきたのじゃ。」

「一種の人質ですか。」

「そうともとれる。」

「他にはスパイの可能性もありますね。」

「可能性としてはそっちが心配なのじゃ。」

「だから帝都から離そうって話ですか。」

「ちょっと違う。こちらにはまだ受け入れ準備ができていないと返したのじゃが、向こうは「なら、ボリアの皇族の嫁ぎ先に招待してください。むしろそちらの方がいい。」と言って来おたのだ。」

「怪しさ爆発ですね。」

「そうじゃろ。」

「黒騎士みたいにウルトゥムが狙いとか?」

「だとしてもあけっぴろげすぎる。これではよほどのバカか本当に裏がないかのどちらかになる。」

「あぁ、それでヴォルテールですか。」

「そうじゃ、ウルトゥム嬢では偏見がありそうじゃからな、それで、竜殿はどう思う。」

「そうですね。拙が思うに黒騎士殿が2度目の襲撃をしてこないならば裏はないと思います。」

「その根拠は?」

「あの方なら1度失敗したのなら2度目こそ自分で動きます。からめ手や他の者に出しゃばらせません。それがないということは黒騎士殿が現状に納得しているか、何か準備しているかのどちらかでしょう。」

「つまり、黒騎士が出てこない限りは政治家共はウルトゥムにちょっかい掛けないだろうってことか。」

「そうですご主人様。」

「なるほどな。それなら皇族と同じ環境で客人をもてなすのはいいかもしれませんね。」

「うむ、それで帝都から離せるならテロや情報漏洩のリスクを減らせる。」

「して、その使者はいつぐらいに来る予定ですか。」

「実はこの後にウルタールの方に行くのじゃが、そこでボリアの使者と顔合わせをする。向こうさんとしてはこっちの都合がつくならすぐにでもと。こちらの都合に合わせるようじゃ。」

「となると、異界の調査が終わってから――――

「お待ちくださいご主人様。僭越ながら申し上げます。まずその使者の名前は分かりますか。」

「確か、クーム・オニックスとヤーガ・オニックスという姉妹だそうじゃが。」

「クームとヤーガ。その2人はボリアの魔法研究院では若手の実力者ですな。ならば向こうも本気で国交の為の使者にするでしょう。」

「ふむ、有能な人材を使者に出すなら期待できそうじゃな。」

「この2人、実力もあれば研究員としても優秀、で、せかっくですし、異界探索に連れて行くのがいいと思います。」

「他国の使者を軍事行動に組み込むのか?」

「拙が2人を指揮します。そして拙はご主人様に従います。どうでしょうか。」

「う~む、異界にはヴォルテールを連れてく予定だったけど、」

「良いのではないかの。異界にボリアの脅威があるならそれを共に解決するのは良いイベントになるじゃろ。」

「分かりました。ではその方向で。」

「うむ。それで次の話じゃが、――――こいつを見てほしい。」

「こ、これは――――

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