第115話 君の声を聞かせて。2

 じいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい。


「何よ。そんなにじっと見つめて、兄さんのヘンタイ。」

 雫ばかり見ていてはいけないと思い、今度は暁の方を見る。

 その暁は最初は堂々としていたのに、十全の視線が自分に向いたとたん、顔を赤くして体を隠そうとする。

「エッチ、スケベ、ヘンタイ。」

 悪態をついてくるが、この前ウルトゥウとからかった時の猫のモノマネ以来、暁の声がクギミーの声にしか聞こえないのである。

 だからどんなに悪態をつかれてもそれはご褒美です。

「フシャアアアアアァァァァァァァァ!」

 つに威嚇を始める暁。

 

 「暁はツンデレのジョブを獲得した。」と言う、言葉が効果音と共に十全の脳内に響いた。

(旦那からの満足感☆いただきました~♡)

 十全のテンションと一緒に悪魔のテンションも上がった。


「ちょと待って、なんで無言で近づいてくるの。」

 暁は十全から距離を取ろうとするけど、雫がその手を掴んでさえぎる。

(おっといかんいかん。ついツンデレの魅力に釣られてしまった。」

 少し冷静さを取り戻してから暁の顔を見る。

 その顔は結構テンパっていた。

 そうだ。

 暁は平成日本……じゃない、令和の日本からの転生者だ。

 死んだときは高校生だったらしい。


「私は死んだときはピチピチの高校1年生。JKってやつだったのよ。」

「じゃぁ何でエロゲーランスを知っているんだ。」

 ぴ~ひゅるり~と下手な口笛でごまかす暁。


 そんなやり取りがつい先日行われたばかりである。

 つまり、暁にとってこういうセクシャルな話はゲームの中だけだったのだろう。

 こっちに来ても、価値観は日本のものを引きずっていたから結婚やセ〇ッスについて。実感を持っていなかったのであろう。

 だいぶしり込みしてしまっている。

 分かる。

 十全にだってついこの前まではそんな感じだった。

 急にウルトゥムとの結婚が決まって驚いたものだ。

 ここはやはり兄として妹を導いてあげなければいけないのだろう。

 じっと見てたら暁が怯えるので1歩引く。

「あっ。」

 と暁がつぶやいて、体がこちらに寄って来る。そのタイミングで低い位置から暁との距離を縮める。

「――――っ。」

 暁に覆いかぶさるように顔を近付けて、耳元でささやく。

「大丈夫だから、お兄ちゃんに任せなさい。」

 そしたら、暁に思いっきり頭を叩かれた。

 距離を取ってからその顔を見ると、顔を膨らませているけど嫌がってはいないようだ。

「兄さんのヘンタイ。トウヘンボク。女たらし。」

 顔を真っ赤にいてポカポカ叩いてくる暁はかなり可愛げがあった。


 そして改めて、暁の体を見る。

 雫と一緒で武人として鍛えているだけあってその体はスレンダーだ。

 だが、胸の厚さだけは雫と比べて残念な結果を出している。

 だからと言って色気がないわけでは無い。

 青い下着に身を包んだ暁は幼さを残しながらも、大人への階段を上り始めた少女の色気を出していた。

 その体を恥じらいながらにかき抱く暁は間違いなくツンデレヒロインだった。

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