第102話 決闘。2
決闘に指定されたのは夕日で空が赤くなる時間帯だった。
仕事を片付けて指定の場所へと行くと。
「何故に土俵。」
分かるか。
元許嫁から決闘を申し込まれて指定の場所へと言ってみると、そこにあったのは、盛り上げられた土と、天蓋が設えてあってどう見ても相撲の土俵でしかなかった。
「え?決闘って相撲を取るの。」
いや、相撲で決闘ってのも無くはないけど。
でも相手は雫だ。
軍人堅気な面もあるが、うら若き乙女だ。
それが相撲?
そういえば、昭和の映画だったかに女性が相撲力士を目指す「しこ踏んじゃった。」って作品があったなぁ。なんて十全が考えていると向こう側から雫が現れた。
「よくぞ逃げずにやって来た。」
そう言う雫はまわしもさらしもまいてはいない普通の軍装だった。
それに安心する傍ら、残念な気持ちにもなった。
「見たかったのか、大和撫子な雫のまわしとさらしだけの体を、肌があらわになった引き締まっていただろう肉体を、お前は見たかったのか?」と、十全の中の悪魔が訪ねてくる。
ちなみにその悪魔はウィズではない。
ウィズなら、「どうですか、元許嫁のあられもない姿は☆満足ですか?ち〇こ起ちますか♡起てたら二重の意味で負けになりますよ☆」とか言ってくるだろう。
後問題は、
土俵を挟んで対面にやって来た雫の傍らにウルトゥムが立っていることだ。
まるで太刀持ちみたいだ。
って言うかほんとに太刀を持っている。
じゃぁ、ニャルは露払いか。
それじゃあ、行司は誰がやるんだ。
「そりゃぁ旦那☆ボクですよ♡」
ホントに悪魔が出てきやがった。
「なんかそっちだけセコンドがいるみたいだけど?」
「大丈夫です。」
「ご主人様には拙が付いております。」
「うおぉう、ヴォルテール居たのかよ。」
声に振り向受けば執事服の老紳士が控えていた。
「ええ、おりましたとも。皆さんが仕事をされてる中、拙もそばで仕事をしていましたよ。画面の隅を見てもらえばいますので探してみてください。」
「メタっぽい発言をするな。」
「最近ご主人様に教えてもらったアニメとやらではこういうのが面白いのではないのですか。」
「ご主人様。どうぞその駄竜めを盾なり身代わりなりに使ってください。」
「ひどいですな。」
「いやいらねぇよ。」
「ひどいですな。」
と、冗談はここまでにして。
「ホントに相撲を取るのか。ソレとも真剣勝負か?」
真剣勝負ならシュミレーターを使うことを勧める。ツィマットが首都から持ってきているのだ。
「相撲はとらない。真剣も避ける。ただ、刀を用いて真っ向勝負を申し込む。」
「それならシュミレーターってのがあるから――――
雫からの申し出にそう答えると、
「いな、仮想空間でなくて現実でなければ意味がない。」
「おっけー、じゃあ、決闘でそっちの望むものはなんだ。」
「私が勝ったら1つワタシの望みを受け入れてくれ。」
「で、俺が勝ったら?」
「1日私の体を好きに使ってくれ。」
「……………………。」
なんだそれは。
なんかふざけている様だが、あの生真面目な雫がこのような条件を出してくるだけ重要な申し出があるという事か。
思い当たることはいくつかあるが―――――まぁ、冗談で聞ける話じゃなさそうだし、この勝負負けられはしないか。
いっそ決闘を拒否するって手もあるが。
「へいへいへい、ビビってんのかよぅ。」
ウルトゥムがあっちに付いて煽って来る時点で逃げられない。
しかたないから俺は土俵に上がったのだった。
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