第73話 ブルータスとはボリア語で「くそったれ。」
片手突き、牙突と言えば平成っ子ならそのモーションも想像できるだろう。
それを放った残心の中で十全は切っ先が堅いものを貫く確かな手ごたえを感じていた。
「――――――――――。」
十全と黒騎士の間にしばしの間、静寂が訪れる。
ズルッ、ズズズズズルルルルルルッン。
十全の視界を遮っていた触手が湿った音を立てながら、力なくほどけて引っ込んでいく。
触手の壁の向こうから姿を現した黒騎士は、
「ギッギッギ、惜しかったな。」
不快な金属音のわらいをあげながら、顔の前にかざした左手を顔の前からどかそうとする。
十全が刀を引き戻すと、黒騎士の左手の甲に刺さっていた切っ先が抜けて、自由になった左手を下げる。
その手の裏からは無傷の黒騎士の顏(兜)が現れた。
「しかし、ワシの装甲を貫き傷をつけたことは誉めてやろう。」
十全の突きは黒騎士の手の甲を貫きはしたものの、狙いの顏には届いていなかったのだ。
しかし意外なのは、黒騎士の左手の甲から垂れ流されているのが赤い血だったことだろうか。
「てっきり黒い粘液でも出るかと思った。」
そうつぶやく十全だった。
十全のつぶやきが聞こえなかった黒騎士は嬉しそうに笑いながら告げる。
「いいだろう。貴様を敵と認めてやろう。クッハッハッハッハ、見るがいい、ワシのホントのチカ――――――――――
「貰ったああああああああああ!」
「!」
黒騎士が話している間に、後ろの物陰から鎧姿になったウルトゥムが飛び出し、黒騎士に切りかかった。
しかしそれに黒騎士は反応してカウンターの斬撃を―――
「貰ったああああああああああ!」
放つところを十全が渾身の突きの二撃目を放った。
「
吹っ飛ばされる黒騎士。
貫けなかったことに舌打ちをかます十全。
2対1になったのだが、黒騎士に決定打を与えきれなかったことに十全はあせる。
何故なら、援護に来たのは黒騎士の目的のウルトゥムだからである。
十全はなんとしてもウルトゥムを守るつもりで黒騎士と戦っていた。
そこに逃がしたはずのウルトゥムが自ら現れてしまったのだ。
正直文句を言ってやりたいところだが、そんなことを言ってる場合ではない。
黒騎士は小刻みに震えながら立ち上がってきた。
「ギッギッギ、ようやく見つけたぞ。ウルトゥムよ。」
黒騎士は勝ち誇ったように両手を広げて笑いながらにウルトゥムに詰め寄ろうとする。
「ギャッハハハハハハハ、――――――さぁ、ワシと一緒にボリアに帰ろう。」
「嫌です。」
「何で。」
「ワタシはボリアが嫌いですから。」
ガーーーーーーーーーーーン!って音が聞こえそうな感じで黒騎士がショックを受けている。
(なんか、明らかに状況が変わったような。)と思う十全。
「何よりあなたのことも嫌いです。肌が白いからと言って散々嫌がらせをしてきたあなたが。何よりその黒光りするところがワタシの嫌いな〇〇〇〇みたいでキモイです。」
ビシッン!と黒騎士にひびがはいいたような音が聞こえ、黒騎士は固まってしまった。
それから少ししてからふるふると震えると、
「これで勝ったと思うなよおおおおおおおおおおお!」
叫びながら走り去ってしまった。
「…………結局…なんだったんだ。」
「さぁ?」
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