第74話 黒騎士の正体。

地球のうっそうと茂るジャングルの中を黒騎士は走っていた。


そして手ごろな木に向かって渾身の左ストレート。


ズドッン!という大きな響きと共に大木と言える木が折れて倒れた。


メキメキと音を立てて倒れる木の向こう側に、黒騎士が左拳を頭上に掲げ右手で手首をつかむ姿で立っていた。


その姿がガクンッと膝から崩れ折れた。


「めっっっっっちゃ、痛ってええええええええええええええ!」


左手の甲からは血がピューピューと噴き出していた。


「当たり前だバカ。」


「五月蠅い。」


黒騎士は自分の兜を掴むと地面に投げつけた。


すると黒騎士から触手がずるずると兜に群がっていく。


「ひどいなぁ、ワシだって痛みを感じるんだぞ。」


触手からは不快感を感じさせる金属音のような声がが聞こえてくる。


触手は生きた鎧とも言われ、かつては生きた山脈とも呼ばれた「レン」と呼ばれるモノである。


そしてレンの中からは、黒髪に黒い瞳、黒い肌をしている耳の長い上等な衣服をまとった女性が出て来た。


彼女の名前はナイアー・アスト・ラル・ホートフという。


ボリア帝国の本当の皇帝である。


現在ハイパーボリアで玉座についているのは彼女が用意した影武者である。


皇帝ナイアは影武者に玉座を預けて普段は黒騎士として過ごしている。


それを知っているのはナイアとレン、影武者の少女と宰相のセベクだけ。


何故そんなことをしているかというと。


「ウルトゥムがお姉ちゃんのこと嫌いって言ったあああああああ!」


「うむ、君の少々行き過ぎた愛情は妹君には伝わっていなかったようだな。」


皇帝陛下は重度のシスコンだったのである。


「なんでなんで、お姉ちゃんはウルトゥムの為に頑張って来たのに。白い肌だって何度も褒めたのに。」


「他の人とは違うことを強調しすぎて嫌味っぽく聞こえていたぞ。」


「その肌だって、初代様と同じだってことで疎ましく思う奴や、白い肌を貶す奴を排除してあげたのに。」


「その中には彼女の両親や親戚も含まれていたがな。」


「あの子に取り入ろうとする下心のあるやつらも追っ払ってあげた~~~。」


「結果、彼女はほぼほぼボッチだったがな。」


「あの子が傷つかないように危ないものは遠ざけてあげたし。」


「あのバラは彼女が大切に育てていたものだぞ。」


「それだってちゃんと保管してあるわよ。他にも彼女の使ったものは大切に保管して、新しく最高級品の物を用意してるのに。」


「彼女からしたらお気に入りの物を取り上げられただけだよ。あと、彼女の血が落ちた地面を掘り返して保存してるのには結構引いたぞ。」


「なんでなの~~~~~。」


「逆になんでだろうね。」


「―――――っ、誰だ。」


そこに黒い影が現れる。


「警戒しなくてもいいよ。ボクは通りすがりの悪魔なだけさ♡それよりもさぁ☆君たちにいい話がるんだけど。」


「悪魔のいい話だと。そんなモノ信用できるわけがないだろう。」


「大丈夫大丈夫♪あっ、ボクの名前はウィアード・テイルズって言うんだ☆ボクの話に乗っても貰うのは君の満足感だけ♡それだけで☆君にとっていいことがあるんだよ♡」


「……一応話を聞いてやろう。」


「それじゃぁ、ボクと契約してメイドになってよ♡」


ナイアの答えに悪魔はニヤリと笑って答えたのだった。

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