第67話 お土産

大和帝国帝都、特甲技研のドック。


そこに俺は来ていた。


「で、ツィマット所長、いったい何の用ですか。」


「フフフッ、まずはおめでとうと言っておこうか、松永卿。」


「ありがとうございます。そう言えば昨日のパーティーに所長も来ていたんですよね。」


「あぁ、もちろん行っていたさ。しかし挨拶回りが忙しくてな。加えて陛下には前日に謁見していて挨拶は遠慮しろと言われていたもんだから、ずっと陛下にベッタリだったあんさんに近づけなかったのだよ。」


所長の言うとおりだ。


昨日のパーティーはずっと陛下と一緒だった。


ただ一つ言いたいのは俺が陛下にベッタリだったのではなく陛下がずっと俺を引きずっていたのである。


文字通り襟首をつかんで。


まぁそのおかげでいろんな人と顔を合わせることができた。


中には俺の領地の開発に必要な人材もいて、彼らの協力を取り付けることができた。


もともと俺を貴族に抜擢したのが陛下であり、俺の領地の開発にも陛下は積極的に協力してくれている。


これはみなに知られていることでもあり、妬む奴が出るんじゃないかと心配もしたのだが、どうやら俺がらみは陛下とのコネを強くするための勝馬状態であるらしく、今はみんな贔屓してくる。


おかげで領地の開拓のめどが立った。


開拓は帝都側から街道の敷設をするのだが、これは陛下の下にある政府主導になるらしい。


まぁ、街道の重要性から考えたら納得だが、他所も同じかは知らない。


俺のところは街道は政府に任せて屋敷周りの開拓をして街づくりを優先することになっている。


で、俺はそのために先に屋敷に戻って人員の受け入れ準備をすることになっている。


その帰り際である。


特甲技研で乗ってきた甲型機動甲冑を借りに行ったところ、所長に声を掛けられたのだ。


「それで改めてだけど、結婚おめでとう。そして2人にプレゼントだ。」


「プレゼントですか。」


「そう、ウチらの可愛い甲型機動甲冑が正式にあんさんの所有になることになった。」


「えっ、マジで。いいんですか。」


だってこれ軍事兵器。


それも大和の次世代主力の試作品だ。


機密とか軍事バランスとかそこら辺の問題があるんじゃないのか。


「マジやでぇ~。陛下の決定でもある。」


また陛下からの贔屓ですか。


「加えて技術者や設備のセット付や。」


「そこまで。」


「で、行くのはウチや。」


「えっ、いやいや特甲技研はいいんですか。」


「いいもなにも、戦争が終わって軍事予算は値切りや。形は残るが今までどうりちゅう訳には行かんからな。そこで中身を別の入れもんに移すことになったんや。」


「それでうちの領に来るんですか。」


「そや、甲種の平和利用ちゅう建前で研究すんのや。それとあんさんのとこに後進育成の学校を作るつもりみたいやで。」


「何でうちで。帝都に作らないんですかね。」


「多分カダス連邦とかから留学生を迎えるかもしれんから首都から少し離したいんやろ。」


「そうゆう事なら。」


「そいでな、もう一つサプライズや。何とな―――新型や。」


「えっ。」


今回何回疑問符を上げただろうか。


「これが新型のスペック表やけどな。」


「―――こ、これは。完成していたんですか。」


「ドヤ、すごいやろ。しっかり運用データ取ってや。」


新型、それは男の子なら誰もがテンションの上がるもの。


俺も例外でなくこいつを使うことにワクワクしてきた。

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