第47話 新婚旅行は地元で。6
『てなわけで今後は忙しくなるから今のうちに遊んでくるのじゃ。』
という陛下の御言葉で、俺とウルトゥムは大和皇都で新婚旅行に繰り出しました。
正直、公爵とかのこととかが気になりはするのだが、……横で意外とウキウキしていらっしゃるウルトゥムをみると「しょうがねーか。」って気分になる。
とりあえずはせっかくなのでめかし込むことになり、服は朱居さんが用意してくれた。
俺はウルトゥムとは別の部屋で準備をして、この間に大和の観光コースの下調べをしていく場所を考えていた。
「しっかし、やっぱり女の準備には時間がかかるんだな。」
かく言う俺は女の子とのデート経験が無いので比べるものが無いのだが、それでも時間がかかっている気がしなくもない。
これはウルトゥムがせっかくだからと張り切っている?
もしくは手伝いの女官の皆様が張り切っていらしゃるか。
……
そわそわ、
さわそわ、そわそわ。
「落ち着いたらどうですか。まるで初デートの待ち合わせで犬のように落ち着かない童貞の様ですよ。」
と朱居さんに言われて自分が結構楽しみにしていることに気が付いた。
「朱居さん、俺が童貞でないことを知っているでしょう。」
「知っていますよ。」
よく考えたらひどい会話だな。
「ですが、貴方がデート経験が無いのはお見通しですよ。」
「朱居さんがデート経験ないのもお見通しですよ。」
「あ”あ”?」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。」
「そこまで怯えなくてもいいでしょうに。それよりプランは用意できていますか。」
「一応は。ウルトゥムの好みなどが分からないので実際に歩いてみて計画を立てようと思ってるんだけど。」
「ふむ、それが普通の女性相手ならいいですけど、ウルトゥム様は異国、いえ異星人ですので大和の文化には全く知識がないと思います。」
「あっ、そうか。それだと何がいいか聞いても分からないか。」
「ええ、ですのでここは貴方がしっかりリードしなければなりませんよ。」
「ふむ、となると、こった所より分かりやすいところがいいだろうか。」
「まずは大和文化に興味を持ってもらうつもりで広く浅く、でプランを練るのがいいでしょう。」
「だったら最初はこことかどうかな。」
―――
――――――――
俺が朱居さんにデートプランの相談をしているうちにウルトゥムの支度が完了した。
季節のころは冬季を超えて春に差し掛かろうという時期。
地球がアザトース恒星圏に転移してからは季節の移り変わりや暦の法則も変わってしまったが、それでもこの大和帝国には四季がある。
この先、暖かく成れば桃や梅、桜などの鮮やかな花々が咲き始めるだろう。
その季節の移り変わりにピッタリの若草色の明るいコーディネイトでウルトゥムは現れた。
ウルトゥムは外行きの大人ヴァージョンの姿で、その存在感のある上半身を薄い桃色のシャツ、上に行くほど白い色は裾の方に行くにしたがってグラデーションのかかった物だったが、その薄手のシャツを着ていた。
そのシャツの上からはシャツより濃い目の桃色と若草色のグラデーションのかかった半そでの、裾がひざ下までの長い薄手の上着を着ていた。
足元に目を向ければ、スカートは若草色のロング、白色で風の模様がさりげなく施されている上品なモノ。
加えて、茶色の靴を履いている。
全体で少し涼し気なデザインにまとめられている。
ウルトゥムん服は和服と洋服をアレンジした感じに仕上がっているのだが、これは今の大和では少々目立つだろう。
というのも、つい先ごろ迄戦争をしていただけに世間の服装は質実剛健なのだ。
これでははっきりとお嬢さまと思われるだろう。
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