第46話 新婚旅行は地元で。5

「まぁまあ、落ち着くのじゃ。」


少し興奮気味のウルトゥムを陛下が落ち着かせる。


「大和だって別にボリア帝国と仲よくしたいわけでは無い。」


「ではどうして。」


「仲良くしなければ戦争になるからじゃ。だから仲良くしなければならないのじゃ。」


「あんな国、滅ぼしてしまえばいいんですよ。」


ウルトゥムのボリア嫌いは相当のもののようだ。


どうりでヴォルテールに対してアタリがきついわけだ。


「そうできればよいが、今の大和帝国ではそこまでの国力はないのじゃ。戦争を続けていれば大和の民に大きな負担を強いてしまう。それこそボリア帝国のようにじゃ。」


「むむ、それはよくないですね。」


「だから今はボリア帝国と仲よくしておかねばならない、そして、ボリア帝国はどうやらおぬしを取り返したくて仕方ないようなのじゃ。」


「まさか、ワタシはボリアに返されるのですか。」


「せんよ。捕虜の返還協定は結ばれておらん上に、ボリア帝国は捕えた地球人を奴隷として使いつぶしてきおった。そんな奴らのワガママに付き合いはせん。」


「あれ、それじゃぁまた戦争になるんじゃ。」


俺がそこで口を挟むと、


「無理じゃよ。これまでがワガママを武力で通してきた分無理をしておったのが、大和に負けたことでがたがきおって戦争どころではないはずじゃ。ここで戦争再会と言っても内紛と物資不足でバラバラになりおる。」


「なるほど。」


俺が陛下の説明に納得する横で、ウルトゥムも何やら考えている様子だ。


ちなみに朱居さんは陛下の後ろで静かに控えている。陛下に気さくに話していても流石はお傍付きなだけはある。


「まぁ、そんなわけでボリア帝国は大和に対して下手に出ておるからな、このまま外交上でマウントを取り続けられるようにしたいのじゃ。」


「そのためにワタシとミチルを結婚させたのですね。」


「なのじゃ。」


「ふむ、ウルトゥムがやたらチョロかったのは政治っいでっでっでっで――――」


俺が口を挟んだらおもっきしウルトゥムにひねられた。


「心外ですね。ワタシがチョロかったのは裏があったわけではなくて、ワタシでも驚くほどミチルにチョロかっただけですよ。」


と、怒られた。


「かかか、良きじゃ、良きかな。おぬしらが仲良きことは大和帝国の為、朕らの策に大いに結構。2人には早くにも子供を作ってもらいたいものじゃ。」


「子供を政治利用しようとでも言うのですか。」


「うむ、おぬし等の子供と朕の子供を娶せるめあわせるつもりじゃ。」


「…は?」


俺は流石に話についていけなくなったのだが、ウルトゥムはなるほどと納得していらしゃる。


「朕の子とおぬしの子を娶せるから、おぬしは男の子おのこ女の子めのこの両方作ってもらいたい。」


「いや、……え、ボリア帝国との政治の話ですよね。」


「もちろんじゃ。そうすれば大和皇帝とボリア皇帝は親戚となる。このまま大和が政治的マウントを取り続ければボリア帝国を頭から取り込めるという事じゃ。」


政治の話は難しい。


正直、そんなうまいだけの話じゃないんだろうけど、それも込みで策を練っているんだろうし―――、いや、考えんのはやめよう、餅は餅屋で俺は駒に徹しよう。


「と、いう訳でおぬしは未来の公爵候補じゃ、そのつもりでおるのじゃよ。」


……へ、公爵?誰が、俺が?俺って今ですら男爵扱いなんですよね。それが公爵候補とか、どこまで持ち上げるんですか。

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