第45話 新婚旅行は地元で。4
ふふんっと胸を張る陛下とパチパチパチと手を叩くウルトゥム。
「という訳で、おぬしたちには大和帝国とボリア帝国の懸け橋になってほしいのじゃ。」
パチっ―――――――――、陛下の一言でウルトゥムの動きが止まった。
「ウルトゥムさんやい、どうしたんだ。なんかレ〇プされた少女みたいな遠い目をしているぞい。」
ちょっと心配になって俺がそう聞くと、ギギギッ、と壊れた人形みたいに首を回したウルトゥムがガタガタ震えながら口を開いた。
「え”、な”っな”っな”っ、な”に”言ってるんですか、か、か、か、か。あ”あ”あ”~~~~あの国と、と、と、ドッドッドッドッドッドッドッドッドッ。仲良くしようというのか‼」
「どうした?キャラが崩壊しているぞ。」
ドッギャアアアアアアァァァァァン!って感じの効果音が見えそうな顔で詰め寄って来るウルトゥムに若干引きながらも話を聞いてみる。
「あの国はクズだ!文化の欠片もない。そう、あの国に足りないものは~、情熱、思想、理想、思考、気品、優美さ、勤勉さ。そして何よりも―――――――――――愛が足りない。」
「何故そこで愛!そこは速さだろぉうが!」
「ミチルこそなぜそこで速さが出てくるんですか。」
「俺の世界ではなぁ、文化の真髄は速さを極めてこそ、愛は速さの先にあるんだよぉ。」
「訳が分かりません。」
「でぇしょぉねぇ!」
そこで陛下がステイ、ステイと止めに入ってきた。
「まぁまぁまぁ、そこまでなのじゃ。十全の話は突っこむとヤバそうなのでそこまでにせい。―――、それより、ウルトゥムよ、おぬしはボリア帝国が嫌いなのかえ。」
「嫌いです。大っ嫌いです。滅んでしまえと思ってます。」
「ふむ、一応はおぬしの故郷であろう、ましてやおぬしは皇族、何ゆえじゃ。」
「ん?ウルトゥムってボリアの皇族なの。」
初耳なことで俺が驚いていると陛下から「いまさら何言ってんのコイツ。」って目で見られた。
「ワタシは皇族と言っても呪われた存在。白い肌に幼い姿はボリア皇室において類を見ない異常であったため、ワタシは幼い頃より人として扱われることはありませんでした。」
陛下の目に落ち込んでた俺だが、ウルトゥムの言葉に顔を挙げざる得なかった。
それは地球において欧米の白人至上主義における奴隷文化を想起させたからである。
それだとひどい差別を受けたのではと顔を上げると―――
「やつらは1人で起きられるというのに毎朝毎朝勝手に部屋に入って来てはワタシの安眠を妨害してくる。」
―――――んん?
「着替えだっていつも勝手に押し着せてくるし、あまつさえ、ワタシがカワイイのが着たいと言っても、「こっちのほうが大人っぽくて似合いますよぉ~。」って!っ大きなお世話だ。」
あ?あれ~~?
「なにより、何よりあいつらはワタシが丹精込めて育てていた花を、ちょっとケガして血を流したからといって、庭の土をほじくり返して迄して排除したんだ。そりゃぁ穢れた血がしみ込んだ土が気持ち悪いかもしれないとしても、花に罪はないだろうが。あぁぁ、思い出したら腹が立つ。いいか、ボリア帝国の奴らには愛がない。自分たちが可愛くて他人を見下す文化の欠片もない野蛮人なのだ。あんな奴らなんかと仲よくするな。」
――――これはツッコムべきか分からないので陛下を見れば、「任せておくのじゃ。」とサムズアップで応えてくれた。
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