第38話 花嫁の名前は……

「松永公の婚礼の義を始めます。」


その言葉に、「え、誰が結婚するって?俺のほかにも松永さんがここで婚礼を上げるの。やだぁー、かぶっちゃたのね。」とか思いながら会場を見渡しても、誰も進み出ない。


「あのぉ~、陛下、ここで結婚する松永さんってもしかして……」


「もちろん貴様のことじゃ。」


マジかよ。


最近いきなり領地持ちになったり、名無しから陛下に氏名をもらったかと思ったら、嫁までもらうことになっただと~。


「聞いてないんですけど~。」


「そりゃ貴様にはばれん様に進めたのだからじゃ。」


つまり拒否権はないってことですね。


せめて嫁が可愛いことを祈りながらも、流石に誰が来るか予想は付いてる。


パパパパー、パパパパー、パパパパ、パパパパ、パパパパ、パパパパ、パッパーパーパッパッパッパ~~~~~~~~~


お約束の結婚行進曲、ことウエディングマーチが流れ出し、先ほど俺が通った正面の扉が開く。


両開きの扉が開かれ、そこに立っていたのは―――


朱居だった。



……


……………


おい、ちょっと待て。


流石にここで朱居さんが俺の結婚相手ってのは予想外過ぎるだろ。


「え?マジ。」


って、陛下の顔を確認したら。


「えぇぇぇぇぇ~~~~~~。」


て、感じでジト目になっているので違うらしい。


つう訳で、改めて正面の扉の方を見てみると。


朱居さんが扉のわきの見えないところに手を伸ばして何かを引っ張っている。


結構抵抗されたようだが、朱居さんが扉のわきに引っ込んで少しすると、朱居さんに背中を押されたウルトゥムが現れた。


うん。


やっぱり俺の花嫁はウルイトゥムだったようっだ。


って、朱居さんインパクトの後のウルトゥムに安心感を得ちゃったからなんか自然に結婚を受け入れちゃってるよ、俺。


だからといって、嫌だからここで結婚に反対します、とか出来るわけもないんだけど。


ウルトゥムは純白のウエディングドレスを身に付けており、緊張で腰が引け気味だ。


今のウルトゥムはアノ触手の服を着込んだグラマラスモードで、戦場での凛々しい姿とのギャップに萌えを感じる。


まぁ、触手の服の無い本来の姿でのウエディングドレスも見てみたかったと思うが。


別に俺はロリコンじゃないけど、それはそれでもったいないと思うのだ。


その触手の服がない、あるがままのロリロリなウルトゥムを昨晩はメチャクチャにしちゃったんだけどね。


…ロリコンじゃないんだよ。ロリコンじゃ。


パパパパー――――――


朱居に手を引かれバージンロードと化した赤い絨毯をウルトゥムが歩いてくる。


いきなりのことで戸惑ったが、―――――うむ、悪くないな。


そうして俺たちの前まで来たウルトゥム。


陛下のおられる場所、並びに俺の居る場所は他の参列者より高い位置にある。


その段差の前まで来たウルトゥムの手を朱居さんは離して下がって行った。


これはつまり、俺がウルトゥムの手を取ってエスコートしろということなのだろう。


沢山の来賓が見ている中、俺はウルトゥムの前に進み出て手を差し伸べる。


多分俺の顏は緊張で真っ赤になっているだろう。


「結婚は嫌か?」


俺は手を差し伸べたまま、出来るだけ優しくそう聞いた。


ウルトゥムはうつむきながら答えるように手を差し伸べて来たので、それを俺の方から掴む。


「ウルトゥム。」


俺が名前を呼ぶとゆっくりとウルトゥムが顔を上げる。


その顔は赤く染まり、いつもは気丈に立っている眉が下がっているではないか。


「ウルトゥム、おいで。」


そう言って優しく手を引いてやると。


ウルトゥムは一歩踏み出して段差に足をかけた。


そこから少し手を握る力を加えてあげると、ウルトゥムは俺の居る位置まで段差を登ってきた。


あらためて彼女の顔を見ればかすかに微笑んでくれた。


俺はウルトゥムの手を握ったまま、彼女と並んで陛下の前に進み出た。


そこからは陛下によって俺たちの婚礼の儀式が執り行われて、目出度く夫婦になったのである。


松永・ウルトゥム。


俺の妻の名前だ。

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